僕がK‘sセラピールームというカウンセリング・心理療法ができる治療院を開業して10年の月日が経ちました。
今思えば、幸運とキャリアに恵まれて、ここまでこれたなと感謝の気持ちでいっぱいです。
とりわけ、前職の看護師時代に依存症病棟で働くことができ、看護師でありながらCBT(認知行動療法)や内観療法、CRCT(条件反射制御法)などの心理療法を実践できたというのは代えがたい経験でした。
そういった環境で学び、経験できたというのはとても幸運なことだったと思います。
僕が病院を辞める時に、病院長から「片山くんのやっていることが、あと5年経ったらできるようになるから」と引き止められましたが、内心(そんな事にはならんよ)と思って病院を後にしましたが。
5年どころか10年経っても相変わらず変わっていないなと感じます。僕の勤めていた病院がというより、日本の精神科医医療全体が変わっていないのだと感じています。
というのも、精神疾患患者数が1999年204万だったものが2023年のデータで603万人に増えているという事実です。実に20年で3倍です。ものすごい速さで精神疾患患者が増えているということになります。
僕なりにメンタルを病みやすい社会状況、日本の文化、教育に対して思うことはいろいろとありますが。一つ言えば、精神患者数の増加は病気という定義の変化も大きいかもしれません(例えば発達障害という病気)。
ともすれば、人の苦しみが表現しやすい社会になった、人に助けを求めやすい社会になったとポジティブに捉えることもできるかもしれませんが。どんどん精神疾患をお持ちの方が増えていっているという現実は、精神科医療という場が、社会適応できるようになる、楽になる、回復する、という側面では効果が薄いものであるというのは事実だろうと考えています。
現在、精神科医療の中心にあるのは薬物療法であり、それを否定するつもりもないですが、どんどん増える精神疾患患者という現実は、やはり、精神科薬では人の苦しみの根本的解決には至らないと考えます。また、副作用もありますし、抗うつ薬とベンゾジアゼピン系の薬剤(睡眠薬及び安定剤)の依存の問題もあります。
もっともっとカウンセリング、心理療法が広く活用されることを強く願っています。
そういった思いでK‘sセラピールームを開業して10年になりました。
お金も時間も、僕の人生を最大限使ってきました。
嫁さんの前では、プレッシャーで吐いたり、のたうち回りながら。
すべては、人を楽にさせたい、治したい、その一心でやってきました。今、思えばこれも自分のエゴだったなと思っています。
やはり、深く傷ついてきた人に対して僕の心なんて届かなかったり、そもそもコミュニケーション自体がとれなかったり。当たり前のことかもしれませんが、すべての人を救うというのは僕のエゴでしかなかったなとしみじみと思うようになりました。
実は、開業したばかりの時、僕の師匠から一つだけアドバイスを言われたのがそのことでした。
「すべての人を治せると思わないことだよ」と言われ。まだ当時は己惚れていたのでしょう。見てろよ!理論上はみんな治せるはずだ!なんて内心思っていました。やっと最近になって、確かにその通りだと思うようになりました。我ながら、なんて未熟な人間だったのか…。
開業して10年、延べ人数10000人はいかないだろう、8000人から9000人の間ぐらいの方とカウンセリングをさせていただきました。膝を突き合わし、多くは2時間。
話せばキリがないほど思い出はありますが、多くは個人情報がかかわることなので、ここでは控えたいと思いますが。
情熱を持って、人生を使って、10年。僕程度の人間でも、できうる範囲で精一杯の、社会的責任を果たすことができたのかなと。今は、少しだけ自分の人生に胸を張っていいのかなと思えています。
繰り返しになりますが、ここまでできたのは、前職の先生方や看護師長、同僚の皆さまのおかげだと思っています。そして、ひとえに仕事ばっかりで、わがままな僕を支えてくれた奥さんや子供の存在のおかげだと思っています。感謝しても感謝しきれません。
「本当にありがとうございました」
この場をかりてすべてに感謝を申し上げます。
これからも、ひとりひとりに誠実に。一生懸命、話を聞いて。
少しでも、苦しさを軽くさせれるよう誠心誠意努めていきたいと思います。
ここが潰れるか、命が尽きるその日まで。
よろしくお願いいたします。



