依存症・嗜癖行動の原因はアダルトチルドレンだから

人が、依存症・嗜癖行動になるのはアダルトチルドレンだからです。根っこに寂しさ、虚しさを抱えたアダルトチルドレンだからです。これは、依存症医療の中で生きてきた人にとって当たり前の前提なのだが・・この当たり前のことを、依存症者も、依存症を診ている人も分かっていなかったりします。

 

僕の師匠もアダルトチルドレンでアルコール依存症でした

僕は、父親もアルコール依存症で、adult children of alcoholicsなんて言葉もありますが、典型的なアダルトチルドレンでした。僕も、中学ぐらいから20年ぐらいタバコを吸ってきたニコチン依存でしたし、それ以外にも・・・。

僕がずっと師事して、一緒に10年近く働いてきた医師はアルコール依存症でした。河本泰信 という医師なんですけど・・。河本先生も、自分の親子関係の葛藤を抱えたアダルトチルドレンでした。

ここまで読んで、アダルトチルドレンやアルコール依存症者が、嗜癖行動や依存症の治療なんかするなよ・・なんて指摘をする人もいるかもしれませんが・・。依存症病棟で胸ぐらつかまれて、脅されて、それでも依存症者に共感できる・・なんて人は、どこかおかしいというか・・みんな、アダルトチルドレンなんだと思いますよ。

それに、河本先生も、自身の回復のためにAA(Alcoholics Anonymous)という自助グループに通っていましたし(詳しくは 河本先生の著書があるので、そちらでも読んでいただいて・・)、僕も自分と向き合ってアダルトチルドレンから回復した・・と思っているので。医療者、治療者としての資格はあるんじゃないかと思っていますが・・・。

ともあれ、師や僕の人生に照らしてみても、僕が教わったことの中でも、依存症・嗜癖行動の真ん中にはアダルトチルドレンがあるというのは常識でした。

酒を飲む

動物でも、普通の人でも依存症にはなるが・・

依存症の原因がアダルトチルドレンにある・・というのは反論があると思います。それは、動物でも依存症にすることができるからです。

例えば、実験用のラットに覚せい剤を投与したら、行動変異が起きます。日中、日の当たるところでラットに覚せい剤を投与すると、夜行性のネズミが日中、日の当たるところに行くようになります。そして、死ぬまで覚せい剤を求め続け、その行動を繰り返すようになる・・そんな感じです。

それと同じで、普通に幸せに生きていた人が、ヤクザに拉致られ、ヤク漬けにされる・・。もし、そんなことがおきたら・・その人は覚せい剤依存症になるでしょう。

・・でも、普通に生きていたら人生においてそんなことはおきないでしょう。ネズミも、人間も普通に生きていたら覚せい剤を投与されることはないでしょう。

では、なぜ覚せい剤や違法薬物をする人が後を絶たないのでしょう?そういった薬物が危険なことは百も承知。そんなことは子供でも分かっているはずなのに・・。

気持ちよさそうだから?自分の人生なんてどうでもいいから?

その根っこには、やはりアダルトチルドレンの問題があるのだと思います。

ねずみ

依存症者はアダルトチルドレンであることを認めれない

アダルトチルドレンの苦しみは、寂しさ、虚しさ・・そんな感じだと思います。

10代から違法薬物をやっている人・・10代から窃盗癖がある人・・10代から摂食障害、リストカットを繰り返している人・・あるいは不登校、引きこもり・・僕のところには、いろんな嗜癖行動、依存症を持った人が来ますけど・・

普通に考えて、苦しい家庭環境でなければ、10代からそのような問題はおきないでしょう。すべては、寂しさ、虚しさを抱えたアダルトチルドレンだから引き起こされた行動なのです。

それでも、みなさん「私は普通の家族です。普通の親子関係です」と言われる人がほとんどで・・いつも、アダルトチルドレンというものは難しいものだなと感じています。

依存症は別名、「否認の病」などと言われたりします。これは、単に病気を認めたがらないというものではなくて・・。「否認」とは、心理学的に言うなら「不安や苦痛を生み出すようなある出来事から目をそらし、認めることができないこと」「否認は出来事自体が存在しないかのような言動をとる」と言われていますが・・。

依存症・嗜癖行動を持った人たちは、どんな不安や苦痛から目をそらしているのか・・どんな出来事が存在しないかのような言動をとっているのか・・。

僕は、このように考えています。依存症・嗜癖行動を持った方は、アダルトチルドレンを否認しているのだと・・。そして、その苦しさから回避行動として依存・嗜癖行動をしていると思っています。

何にせよ、依存症・嗜癖行動を持った人たちは、自分で抱えきれないほどの寂しさ、虚しさを抱え、それでも、なんとか生きるために依存・嗜癖行動をしてきた人たち・・だと僕は思っています。

それぐらい「アダルトチルドレンだと認める」というのは、苦しい人になればなるほど、認めがたいもの・・だということです。

夫婦喧嘩と子供

アダルトチルドレンだから安心や陶酔を感じやすい

ゲーム依存症者や、ギャンブル依存症者が「脳汁が出る」なんて言ったりしますが・・。なかなか、依存行動の本質をついていて良い言葉だと思います。

依存症になるにはドーパミンという脳内物質が関与していると言われています。処方薬でも、覚せいでも、物質依存症者は、薬物が体内で代謝され、肝臓→血中→脳とめぐり・・やはり、脳内でドーパミンが出るのです。これが、依存行動ができていくメカニズムになるワケですね。

方や、リストカッターや、摂食障害の人に「ドーパミンが出ている」と言っても理解されないでしょう。そういう人たちが感じているのは、ドーパミン=興奮、陶酔という感じではなく、どちらかと言うとセロトニン、オキシトシン=安心感だと思うからです。

アルコールを飲んで、興奮や、陶酔なら普通の人でも分かるかもしれません・・。しかし、リスカや過食嘔吐で安心感・・って普通の人では分からない行動に見えるでしょう。

しかし、虚しくて、生きている実感がない人がリストカットをして、流れる血を見て「ああ・・生きているんだ・・」と安心するというストーリーで考えたら、少しはリストカッターや、摂食障害の方の気持ちも分かるのではないかなと思います。

やはり、依存・嗜癖行動の根っこに、寂しさや虚しさというアダルトチルドレンがあるのです。

 

さて、僕はアダルトチルドレンでした。そして、アダルトチルドレンは回復した・・とも言っています。ですから、アダルトチルドレンと、健常者どちらの感覚も知っているつもりです。

回復した・・というのは、今、満ち足りていて、いつも安心していて、心が平穏である・・ということです。

反面、過去バリバリ、アダルトチルドレンの時は、寂しく、虚しく、不安で、恐怖心で緊張していて・・その心を守るように、ひねくれて、頑張り屋で、怒りも強く・・言えば、キリがないほどアダルトチルドレンでした。

だからこそ感じたほっっっとする感じ。仕事の合間のタバコに・・。仕事終わりに・・。仕事終わりのビールに・・。浸かったお風呂に・・。布団の中に入る瞬間に・・。休日のコーヒーとケーキに・・。脳が痺れるような感じや、強い安堵感や安心感・・・。

いつも不安で、恐怖で、緊張しているからこそ感じる安堵、安心があるのです。

アダルトチルドレンは、いつも寂しく、虚しく、不安で緊張しているから、依存物質や依存行動に、強い安心感や、陶酔感を感じます。依存物質、依存行動に救われた思いになるのです。そのためどんどん依存していき、そこから抜け出せなくなるのです。

僕は、今は、そういった行動をしても昔のような快楽・安心感は感じれなくなってしまいました。なんせ、いつも安心しているので・・。それには少し物足りない気持ちもありますが・・。毎日が平穏である・・今の僕にとっては、それが一番、幸せですね。

ハートの雲

 

依存症は生きづらさと依存行動がやめられないことの2重構造の病である

アルコール依存症の方で、治療プログラムを受けて、自助グループに毎日参加して、断酒(お酒を断つ)に成功して・・依存症的に考えたら回復された方がおられました。はた目には元気そうにされていましたが・・その人は、ある日、自殺して亡くなられました。その方がなぜ自殺をされたのか、その時の状況も、その人の気持ちも、その人でないと分からないですが・・。

その人にとったら、お酒を断つ、依存行動を止めるということと、幸せになるということとがイコールではなかったのかもしれませんね・・・

依存症医療の現場にいると、こういう出来事に時々遭遇します。

依存物質や、依存行動を断つ。やめれば楽になり、幸せになれるとシンプルに思っている人は、その人がなぜ依存症になったか、依存物質を止めたのち自殺したのか・・そういう疑問について永遠に分からないと思います。

 

ここ最近、芸能人の方が違法薬物をして逮捕されることが増えてきましたよね・・。ピエール瀧さんとか、伊勢谷友介さんとか・・彼らは、仕事も順調、お金もたくさんある。名声もある。友人もたくさんいて、家族に恵まれている人までいる。・・それなのになぜ?と多くの人が疑問に思うでしょう。

お金、物、仕事、恋人、家族・・いくら手に入れても底なしに足らない・・そういう虚しさが依存症者の中にはあるのです。

 

僕はずっと条件反射制御法という治療をしてきましたが・・・。この治療は、平たく言えば、依存・嗜癖行動の欲求・衝動を取り除く治療です。

やり方については、ネットでも調べられるでしょうし、本も出ていますので、詳しくはそちらの方を読んでみてください。

この治療を正しく理解し、徹底的にやれば、必ず欲求・衝動は低減、消失します。それは、僕も長年やってきて、この治療の強さと、正しさを理解しているつもりです。

しかし、僕が病院勤務時代、徹底的に治療をして、欲求・衝動が「ゼロになった」と依存症・嗜癖行動者が言って、退院になって・・そののちの後追いをすると、ほとんどがスリップ(再行動化)していました。

どうしてこうなってしまうのか・・それは、治療をおこなった患者さんのカルテを見る、生育歴を読む・・そこに答えはありました。そうなってしまう原因にアダルトチルドレンがあることは明らかだったからです。

僕は、依存症・嗜癖行動は依存・嗜癖行動がやめられないという問題と、この社会で生きていくのが困難であるというアダルトチルドレンの問題、2重構造の問題であると思っています。

脳のシナプス

アダルトチルドレンを治すには

アダルトチルドレンから回復する方法は・・アルコール依存症、ギャンブル依存症、薬物依存症のように、自助グループでの回復というのが一般ではあります。ACA(Adult Children Anonymous)という自助グループがありますけど・・アダルトチルドレンというものは現在の精神科医療の中では病気という認識ではないので、他の依存症(アルコール、ギャンブル、薬物)のように、簡単に施設が借りられないという問題があり、それによってアダルトチルドレンの苦しさ、及びACAが広く広がっていっていないという側面があるようです。

ここ最近は、コロナ禍の中で、Zoomなどでのリモートワークも進み、自助グループもZoomやSNSを通しておこなわれるようにもなってきて徐々に広がりつつあるようです。

 

なぜ、自助グループで回復するのか?

先に触れたように、アダルトチルドレンは寂しさ、虚しさを抱えて生きています。「分かち合い」「仲間」などと言ったりしますが、自助グループでは、同じような苦しみを持った人たちの存在を知ることができるでしょう。そして、受け入れてくれるでしょう。その中で、自分はひとりじゃないと思えた時、アダルトチルドレンの孤独が癒されるのだと思います。

よろしかった、ぜひ1度参加してみてはいかがでしょうか?

 

自助グループでは回復が難しいこともある

どうしても、ACAなどアダルトチルドレンの自助グループでは、毒親に育てられたとか、虐待されたというような激しいエピソードを持った人たちが多く、その中に馴染めないアダルトチルドレンの方たちもいるようです。自助グループも合う合わないがあると思いますので、諦めず、合うところを探してみるのがよいでしょう。

ACAは12ステップという回復のステップを踏んでいくが・・そもそも、自助グループというものがAA(Alcoholics Anonymous)というアルコール依存症の自助グループができたのが発祥であり、ACAの12ステップはAAの12ステップと類似しているので、アダルトチルドレンの人は違和感を感じるだろうなと思います。

例えばAAのステップ1「私たちはアルコールに対して無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた」とあります。アルコール依存症者はアルコールに対して自分の無力を認める・・というところからが治療の出発点になります。

では、ACAのステップ1「私たちはアディクションの影響に対して無力であり、思い通りに生きていけなくなったことを認めた」とあります。先に述べたように、アダルトチルドレンのベースに何かしらのアディクション(依存・嗜癖)はありますので、あながち間違ってはいないのですけど・・・。アダルトチルドレンですから・・親への執着・依存に対する無力を知る・・というところを出発点にした方がピッタリ合うように僕には思います。

その他にも、アダルトチルドレン関連本などありますので、回復の参考にしていただけたらと思います。

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