ヤングケアラーの苦しさについて

「立派な息子さんですね」

「お母さんのお手伝い?偉いね」

ヤングケアラー、子供が親の世話をする。

ともすれば、上記のごとく良いことだと言われることが多いのではないでしょうか。

しかし、その実態はどうなのだろうか?

子供が、両親や、祖父母の世話をして学童期を、あるいは青春時代を過ごすこと。

その影響や、苦しさについての話をしていこうと思います。

 

ヤングケアラーとは

最近、ヤングケアラーという言葉をメディアなどで聞くことが増えてきたように思います。

しかし、ヤングケアラーの苦しさを本当に分かっている人がどれほどいるのだろうか?

今回、ヤングケアラーが抱える呪縛のような苦しさについて話をしていきたいと思います。

 

ヤングケアラーについては、社会学者である澁谷 智子 さんの著書、ヤングケアラー ~介護を担う子ども・若者の現実を参考に話をしていこうと思います。

著書には、ヤングケアラーについてこうある。

ヤングケアラーとは、

家族にケアを要する人がいるために、家事や家族の世話などを行っている、十八歳未満の子どものことである。慢性的な病気や障がい、精神的な問題などのために~未成年の子どもであっても、大人が担うようなケア責任を引き受け、家族の世話をする

とある。

責任とあるが、大人になる前から、そのような強い責任、家族の心配を抱えて生きていくというのは、どれほどのプレッシャーか、どれほどの不安か、想像に難くないところでしょう。

 

日本のヤングケアラーの実態

①ヤングケアラーの数

日本にもヤングケアラーは多く存在している。総務省が2013年に発表した“平成24年就業構造基本調査”では、15~29歳の介護者の数として、17万7600人という数が挙げられている

②ケアの実際

ケアの内容として“身の回りの世話”や“身体介助”がクローズアップされがちだが~“家事”や“きょうだいの世話”もケアとして認識していた」「ヤングケアラーを見る時には、同年代と比較し、その担っている責任や作業の重さをとらえている

とある。

ヤングケアラーといったら介護をイメージしがちだが、家事やきょうだいの世話をしている子供というのも歪であり、そういった責任や作業を担っている子供もヤングケアラーであるようです。

③ヤングケアラーを取り巻く社会的状況

  • 2025年には団塊世代が75歳を迎え“大介護時代”が到来すると言われる日本社会
  • ヨーロッパ以上に長時間労働の習慣や非正規雇用者の経済的不安定さが深刻な日本では、今後、ケアを担う子どもや若者への対応を迫られることが推測される

とある。

かつての日本の貧困と現代の貧困を比べて

  • 「生活レベルの上がった先進諸国で貧困が議論される際に“相対的貧困”という考えがあり~“相対的貧困”は、その社会の平均的な生活レベルよりも著しく低い層をさす
  • 日本人の平均的な感覚として、子どもが家族のケアを担うことはあまり想定されていない。子どもは自分の勉強や友達づきあいや体験を広げることに自分の時間と力を使えるものだとされている社会では~ヤングケアラーを肩身の狭い状況に置いている面もある。~同世代に比べて自分が“取り残されている”と感じやすい

とある。

格差社会や超高齢化社会といった社会状況の変容。核家族化など、家族関係や、共同体・コミュニティーの変化から今後、ヤングケアラーといわれるような人たちは増えていくことが予想されています。

ヤングケアラーは一般的な家族関係や友達からコンプレックスを抱え、孤立し、孤独を深めていきます。それが、かつての貧困と現代の貧困の大きな違いであるようです。

④ヤングケアラーができる家族状況

子どもがケアをすることとなった理由として

  1. 親の病気や入院、障がい、精神疾患
  2. ひとり親家族
  3. 親が仕事で忙しかった
  4. きょうだいが多い、または幼い
  5. 親がネグレクト状態

などとある。

カウンセリングをしていて多いのは、子どもの時に親が病気になったり、親が精神的な問題を抱えていたためヤングケアラーとなったという人たちです。

最近、増えてきているヤングケアラーのタイプは、両親共働きで、家に帰っても誰もおらず、家の手伝いをしてきたという、そういった方も体感的には増えていってきています。

お手伝い

ヤングケアラーの苦しさについて

僕は仕事がら、たくさん苦しんでいる方と接しますが、その中に、ヤングケアラーとして育ってこられた方も少なくありません。

 

ヤングケアラーの苦しさ、心理的特徴

ヤングケアラーの苦しさの特徴としては、献身自己犠牲の傾向が強く、それが原因で苦しんでいる方が多いです。

「自分のことはどうでもいいから子供を助けて欲しい」

「彼(彼女)の事を助けれるのは自分しかいないと思って」

ヤングケアラーとして育った方は、そのような考えを持たれている方が多いです。

 

また、ヤングケアラーとして育った方は、責任感が強すぎたり、人に対する過度な心配なども抱えやすい傾向にあります。

 

大人になっても苦しみ続けるヤングケアラー

いずれ、ヤングケアラーも大人になります。

でも、大人になったからといって家庭環境が変わるわけではありません

僕のところには、親が亡くなるまで面倒をみてきたという人も時々来られます。

50、60代となり、とうとう親が亡くなってしまい、不安と恐怖でパニックとなったり。「私の人生は何だったのか?」と、うつ状態となってしまう方もおられます。

 

また、大人になって家を出られた方でも。

さまざまな人間関係で、献身と自己犠牲強い責任感心配と不安で人とかかわることが多く。

それによるトラブルも増えていきます。

 

例えば、仕事では、責任感が強く、献身と自己犠牲で一生懸命仕事をするようになるでしょう。その結果、社会的に認められることも多いかもしれませんが。

反面、うつ病となり仕事に行けなくなったり、プレッシャーに押し潰されてしまいパニック症状が出たりと心の調子を崩してしまわれる方もいます。

 

また、恋愛、結婚相手を選ぶとき「私がいないと彼(彼女)は生きていけないから」などという理由で選んでは。その後のパートナーとの関係、生活は精神的に苦しいものになるというのは容易に想像できるでしょう。

いわゆる共依存という特殊な人間関係にハマって、抜け出せなくなっている人も多いです。

 

また、子育てにおいても「心配だから」というかかわりが過ぎると、逆に子供の成長を阻害してしまいかねません。

 

ヤングケアラーが苦しまずに生きていくために

ヤングケアラーで育ってきた人が大人になった今も苦しんでいる理由は、苦しかったことを話してこれなかったことが理由に挙げられます。

それは、ひとえに、それが許されなかった家庭環境があったからです。そのため、ヤングケアラーで育ってきた人は、自分の苦しさを話すことに抵抗がある人も多いです。

 

まずは、苦しかった‥という話をすることが重要なこととなります。

ヤングケアラーは特に家族に話すことに抵抗が強いですから、話す相手は家族以外で、信頼ができる人だったら誰でも良いでしょう。

思い当たる人がいなければ、ヤングケアラーの問題や家族の問題に詳しい心理カウンセラーを探して相談するのもよいでしょう。

 

澁谷 智子 さんの著書の中にもヤングケアラーで育った方のプラス面として

高い生活力を身に着けていること、聞き上手であること、忍耐強いこと、病気や障がいについての理解が深いこと、思いやりがあること

とあり、ヤングケアラーはホスピタリティの高い人でもあると言えます。

ヤングケアラーとして育ってきた方は誰かのために生きていくのが得意な人です。

献身と自己犠牲で自身が苦しんでいたらいけませんが、基本、誰かのために生きることは悪いことではありません

問題は、誰のために生きるかという選択が大事なのだと思います。

 

例えば、やってあげても感謝もない、そんな人に自分の大切な時間、人生を尽くしたらどうなるでしょう?

たちまち心と身体が悲鳴をあげて、苦しくなってしまうでしょう。

やって当たり前という人に尽くしてはいけません。

もし、献身と自己犠牲でしか生きられないというのなら、したことに感謝と愛情を示してくれる人に尽くすことが大事だと思います。

 

そして、そうやって自分を認め、愛してくれた人たちは、必ず自分の幸福をも願ってくれるでしょう。

その愛情を感じることです。

苦しい出来事があるなら、今度は、そういった人たちに支えてもらいましょう。

そのように生きていけたなら、きっと支え支えられ、愛し愛され、幸福に生きることも可能となるでしょう。

 

このブログを読まれたヤングケアラーたちが、ご自身と家族関係の問題に気づけて、さまざまな社会資源を活用し、カウンセリングなどの精神的サポートを受け、心身の負担が少しでも軽減されることを願っております。

僕は、人間は自分が幸福になるために生きることが大事だと思っています。

ですから、いつかヤングケアラーたちも、背負ってきた責任から解放され自由になって、自分のために幸福に生きていけるようになればいいなと、そう心から願っております。

旅立ち

本記事では全ての引用部分は下記文献によります。

 

 

 

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