「毒親」、強烈な言葉ですね。
「毒親」なんて言葉、親を思う子が見ても到底受け入れることはできないでしょう。
というか、子は親を思うものなので・・
最初から、毒親なんて言葉を受け入れることができる人は少ないと思います。
虐待・支配・コントロールするような親は毒親という表現で良いと思いますが、個人的には、もう少し親のタイプによって表現が違ってもいいのかなと思ったりします。
今回は、毒親というものについて深く考えていきたいと思います。
毒親とはどんな親を指すのか?
毒親という言葉はもともと、アメリカの医療機関コンサルタント、グループセラピストであるスーザン・フォワードという人が言い出した言葉です。
「毒になる親~一生苦しむ子供」という著書が有名ですが。臨床的知見に富んだ素晴らしい本ですので多くの方に読んでいただきたいなと思います。
今回は、その本の中から、毒親とはどんな親を指すのか?また、毒親に育てられたらどのような大人に育つのか?
など、要約して、お伝えしていきたいと思います。
毒親とは、子どもの時以下のようなかかわりをしてきた親のことを指します。
- 人間としての価値を下げることを言う、侮辱する、嫌味を言う、罵る、非難する親
- 過剰なしつけ、虐待、性的虐待などの暴力を振るう親
- 食事のマナー、服装など、生活全般について口を出す。学校、就職など進路、結婚、子育てなどに対する口出し。子供を支配・コントロールしようとする親
- コミュニーケーションがとれない。言っていることとやっていることが違う。アルコールや薬物を摂取して人が変わるなど、混乱させる親
- 身体的な病気、精神的な病気があり、いつも苦しそうな親。また、仕事や誰かの世話などで忙しく、大変そうな親。
などと書いてあります。
怖い親か、混乱させる親か、大変そうな親か。
だいたいこの3つを指して毒親と称すようです。
親から虐待、支配、コントロールなどを受けていたなら、自分の親が毒親だったと気付くことは容易なように思われますが、実際には、
「私の親は普通の親です。よく叩かれたり、蹴られたり、柱にくくりつけられたりもしましたが。昭和の時代はみんなそんなもんでしょう」などとはなし。
それでも、そんな話をしながら泣いていたり、トラウマや心的葛藤から来る身体的な反応に苦しんでいたりします。
実は、虐待や、コントロールがあったという人でさえ、毒親だったと認めることは容易ではありません。
混乱させる親も、仕事をして、お金を稼いでくれたり、食事を作ってくれたことなど、表面的なことをちゃんとしてくれていたら、毒親だったと気付くことは難しいでしょう。
しかし、ダントツで気づきにくいのが、大変そうな親です。
そもそも、これを読まれている方も、大変そうな親=毒親であるという認識はなかったのではないかと思います。
この場合、直接、親から悪意がある態度や言動に傷つけられてきたワケではないので。
むしろ、親は苦しんでいたり、一生懸命であったりしますから。そんな親を見て、どれだけ不安で寂しく育ってきたとしても、親のせいにすることはできないのです。
最近は社会的に核家族、共働きの家庭が当たり前になってきており。両親の離婚からワンオペで育った方。また、ヤングケアラー(家族の世話をする子供)という言葉も広まってきていますが、そういう環境で育ってきて、親子関係に問題があったとは、まず認められないでしょう。
しかし、たとえ、大変そうな親であっても子供の気持ちに気づいてあげること、話を聞いてあげることはできただろうと思います。
そういう子供の思いに気づいて、寄り添い聞いてあげられなかったという点において、やはりそういった親も毒親(毒になる親)であると言っても間違いではないのかもしれません。
ただ、そういう人たちは毒親とか、アダルトチルドレンという言葉は、まず認められないでしょう。
毒親に育てられると、どんな大人となるのか?
- 自信が無く、自己評価が低い、自己肯定感が低い。
- 罪悪感を抱きやすい。自己嫌悪。しばしば、自滅的な行動をとってしまう。
- 異性関係、人間関係がこじれ争いになりやすい。
- 人との関係や、人生全般で悪い結末を予想してしまう。
- 自分がどんな人間か、何を感じているか、何がしたいのか分からない。
- 本当の自分を出せない。本当の自分を知られたら、人に嫌われると思ってしまう。
- 理由もなく、時どき無性に腹が立ったり、悲しくなったりする。
- 完璧主義。何事も完全でないと気がすまない。
- リラックスしたり、楽しく時間を過ごすことが苦手。
などとあります。
毒親に育てられると、どんな毒親のタイプであっても、自己の価値が低かったり、罪悪感を抱きやすく、自己嫌悪が強い人間となってしまいます。
それ以外の特徴は、個人的には、どんな毒親のタイプかで、症状の出かたが違ってくると思いますので。上記したもの、3つ以上当てはまれば、毒親に育てられた可能性は高いのではないのかと思います。
しかし、上記のような症状があると、生きること、特に人と良好な関係を作っていくという点において、相当な困難を生じることは明らかでしょう。
毒親の影響から解放されるために
スーザン・フォワード「毒になる親~一生苦しむ子供」著書の中にも、詳しく自身が毒親からの影響から解放され、本当の自分になるというすべは書かれています。
著書には、大きく分けて2つのステップがあります。
- 感情を吐き出す。怒りや悲しさの感情を吐き出す。
- 親との対立
とあります。
例えば、怒りを吐き出す方法として、下記のようにあります。
怒りは内面に溜めておかないで外に出す。とはいえ、もちろん人にぶつけるのではない。枕を思いっきり叩く、怒っている相手の写真があればそれに向かって大声でわめくなどとあります。
こういった方法は、大いに共感できる方法です。
とりわけ、親に対する怒りを吐き出すことで、自分の思いや、感情に気づくことも多いですし。また、怒ることで不安や恐怖を払拭できたり。他者と自分との境界線もできるようになるので、できる人は是非、実践してみてほしいところです。
また、親との対立は、復讐のためでも、親と分かり合うためでもありません。あくまで、自分が親の影響から解放されるという目的。親への恐怖を乗り越えるため、親との精神的決別のために必要なことなのだと思います。
親との対決は、毒親の影響が強ければ強いほどハードルが高いものになると思いますので、あまり無理をしないことをおススメします。
ここまで読んで、そういったことがひとりでは難しそうだなとお思いの方は、アダルトチルドレンや毒親問題に見識があるカウンセラーと共に、毒親からの解放、自身の解放を進めていくことも良いのかなと思います。
毒となる親はいる
毎日のように子殺し、親殺しがニュースとなり。
児童相談所への虐待の相談対応の数など、ここ10年で5倍。年間20万件にもなってきています。
また、殺人事件の半数以上は、家族、親族間でおこるものです。
悲しいことに、本来、愛し愛されるべき家族の中で、虐待、殺害、暴力、殺人に至ることが事実としてあるのです。
まさしく毒親とも言うべき親はいるのです。
しかし、家族関係で苦しんでいる人の中で強烈な毒親というのは少数派だと個人的には思っています。
親の影響を受けて苦しむ子供のほとんどは、親自身が愛情だと思って一生懸命子供と接していたり、あるいは親が大変そうだったという中で育ってきた人たちが多いです。
繰り返しになりますが、そういった人たちは毒親やアダルトチルドレンという言葉は受け入れられないでしょう。
やはり、毒親という言葉ではない、別の親を表す言葉がいるのではないかと個人的には思います。
例えば、弱親(よわいおや)、苦親(くるしいおや)、忙親(いそがしいおや)、気づかない親、などというように。
そういう言葉でもあれば。そういった人たちも自身の苦しさと、親子関係がむすびついて、気づきや、変わるきっかけをつかむことができるようになるのかもしれません。
最近は「毒親」という言葉もそうですが、よりカジュアルに「親ガチャ」なんて言葉もネットの中では散見されるようになり。自身の親が毒親であったということに気がつきやすい良い時代になってきたなとは思います。
そういった方たちにとって、この記事が気づきの先となること。あるいは、自分を取り戻すきっかけになれればと思います。
参考書籍:『毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫) [ スーザン・フォワード ]』