宗教2世として生まれて

僕は、創価学会の2世として生まれました。
ある誕生日の日、急いで家に帰ると、がらんどうの家の中に「会館に行ってきます。ラーメンがあるので食べておいてください」という置手紙だけがありました。
親は宗教を見ていて、僕のことは見ていなかったのです。

僕は名前を宗教に奪われた

「千と千尋の神隠し」という物語は、「千尋」という女の子が神様の国に迷い込むところから物語は始まります。
両親は、神様の食べ物を食べてしまったために豚になってしまいます。
そして「千尋」は湯屋を営んでいる湯婆婆という魔女に名前を奪われて「千」という名前に変えられ、その湯屋で働くようになります。
同じような境遇で、湯婆婆の元で働くハクという少年がいますが、やはり、湯婆婆に本当の名前を奪われて使役されていました。
ハクという少年は、実は龍なのですが・・物語の中で、千を幾度となく助けてくれます。
いろんな人に助けられ、千は人としておおきく成長していきます。
千が、龍の姿のハクの背中に乗っている時、小さい頃の話をしだします。コハク川という小さな川に落ちた時の話です。
その時、ハクは自分の本当の名前“ニギハヤミコハクヌシ”であること、かつて川に落ちた千を助けたことを思い出すのです。

「千と千尋の神隠し」はそんな物語ですが・・名前を奪われ、使役され、自由を奪われ。そして、成長し、名前を取り戻し、自由になる・・という物語なのかもしれません。
僕は、この物語を見て、いつも涙します。
それは、僕も千やハクと同じ、自分の名前を奪われて生きてきたからです

僕の名前は片山太郎 といいます。でも、僕は末っ子です。
おかしいですよね・・「太郎」って長男って意味ですからね。
僕の家は創価学会をしていて、僕が生まれた時に、ちょうど選挙があって、そこで山田太郎 さんっていわれる方が当選をして、祝賀会をウチでしたそうです。
そこから、名前をいただいて、僕は「太郎」と名付けられました。
当然、周囲の人間の期待もあったように思います。
僕は、立派な人の、立派な名前をいただいて誇らしかったことがあったでしょうか・・・残念ながら、そんなことは1ミリも思ったことはありません。
僕がこの名前をもらい、育ち、思ってきたことは、名前に対するコンプレックスと、創価学会の家で生まれたんだという宿命でした。
僕は、生まれた時から自分はなく・・名前さえ宗教に奪われて生きてきました。

千と千尋の神隠し

宗教の家に育って奪われてきたもの

ご存じの方はご存じだと思いますが・・創価学会という宗教は、ずいぶん排他的なところがあります。
その為、普通の家庭では普通にあるはずのものが禁止されていて無いというのは、生まれた時からありました。
例えば、クリスマス
長年、クリスマスというものが世の中にあるということさえ知らずに生きてきました小学4年ぐらいの時に、同級生がサンタさんがいるかいないかの議論をしている時に、サンタさんなる人物がいるという事を知るという・・「サンタって誰?」そんな感じでした。
当然ですけど、クリスマスプレゼントなんぞもらったことはありません。とはいっても、僕は誕生日プレゼントももらったことはないので・・何が普通かなんて、大人になるまで気づくことはありませんでした。
あと、お祭りですね。
近所の八幡様のお祭りが毎年ありましたけど・・それも参加することは叶いませんでした。
みんながはっぴを着てお神輿を担いで太鼓を叩いたり、おモチ投げをしたり。子供の時、参加できれば楽しい思い出だっただろうが・・。そういうものは、うらやんで眺めるだけで、参加することは叶いませんでした。
それと、同じかもしれませんが・・初詣というものも大人になるまでしたことがありませんでした。

朝も夜も、土日も・・。
創価学会という宗教は、勤行(ごんぎょう)というのですが、毎日拝むんですよね。
朝と夜の2回。まず「南無妙法蓮華経(なんみょうほうれんげきょう)」というお題目を三唱して、経本の方便品と寿量品を読経し、そしてまたお題目を三唱する。子供はそこまでで30分ぐらいで終わる感じですかね。それが朝、夜と2回。
大人はここから、まだまだ続くわけですが・・
朝と夜、それだけの時間を子供たちも、大人たちも勤行にとられるわけですから・・やはり、僕には家族の時間の記憶がないですよね。
また、月に何度かは座談会という会合に参加していました。
地域の同じ学会員の家に集まりみんなで勤行をして、そのあとは・・学会に入って、勤行をあげてがんが治っただとか、病気が治っただとか、そんな奇跡体験みたいな話を聞いてきました
土日は土日で少年部とか、未来部って言うんですけど、その地域の学会の子供たちが集まって創価学会の勉強をするという事をしていました。
そこでは、両親と一緒にいたという記憶がないので、親たちは、子供をそこに預けて別の学会活動をしていたのかな・・と思います。
やはり、学校が休みの日も、家族と過ごすという普通の家庭の記憶は僕にはありませんでした・・

僕が結婚して、子供ができて、家族を作って・・本来あるべきものが僕には無かったこということが少しずつ分かってきました。
今、僕は仕事が終わって家に帰ったら・・子供たちとハグをして、話をして遊んだり一緒にご飯を食べて、また遊んで・・。
土日は土日で、1日中、一緒に遊んで・・。
大切な大切な家族の時間。
過去を思い返して、僕の記憶の中には、そんなものはひとつもなかった。
無いことなので、記憶もなくそれが苦しかったという自覚もなく生きてきましたが・・。今、改めて思い出すと、やはり悲しいものです。

家族と過ごすクリスマス

親は宗教を見ていて、僕を見てはくれなかった

僕の家は、僕が生まれた時には、すでに学会活動を熱心にしている家だったようです。
僕が2歳の時仮性コレラ(コレラではないけど、コレラと似た症状)という病気になって、死にかけたことがありました。医者も匙を投げたそうです。
その時、ウチのお母さんはそれを知って創価学会の総本山静岡県にあり、そこに行きご本尊の切れ端をもらってきて、それを煎じて飲ませた・・すると、病気が治って、回復したと・・。
そんな、奇跡体験があったようで・・。
僕は、この命があるのは母親のおかげ、創価学会のおかげです・・と普通は思うのかもしれませんが・・。当時は、それを聞いても、自分の命に価値もなく、生きる理由も分からなかったので感謝はできなかったですね・・。
そういう経緯もあってか、そこから母親が宗教活動にさらに熱を入れていくのは、気持ちが分からなくもないところです。今、もし僕の家族、嫁さんや、子供に何かあれば、それが自分の力ではどうにもならないものであれば・・神だろうと、仏だろうと祈るしかないだろうと思うからです。

僕は朝も夜も祈ってきました。
土日も家族団らんの時間もなく・・。
生まれて14年間は「南無妙法蓮華経・・」と祈ってきました。
でも、そんなことで僕が楽になったり、幸せになることはありませんでした。
「・・なんのために祈っているのだろう?」
思春期の頃には、そのように考えるようになりました。
誕生日のある日、今日は誕生日だからと喜び勇んで家に帰ると・・家はもぬけの殻。夕日が沈む時間で、うす暗い家の中、置手紙だけが置いてありました。
「冷蔵庫にラーメンがあるので、作って食べておいて下さい」と・・
なんと、僕の誕生日、11月18日は創価学会の創立記念日で、そのために家族総出で会館に行っていたようです。
今、気づいたのですが・・だから僕の名前は「太郎」なんだな・・と思いました。
やはり、創価学会創立の日に生まれた子には、多くの学会員が勝手に期待したんだろうな・・と思います。
でも、結果は、僕の誕生日の日は、創価学会にとっても特別な日僕と創価学会を天秤にとった時、親は創価学会をとったのです。
僕は何のために生まれたのか?親は何を見ているのか?
そういう疑念が生まれるには十分な出来事でした。

僕は、生まれてずっと創価学会に祈ってきました自分の幸福と平穏のためです。
僕は、家族の幸せな時間がほしかったのです。
でも、奇跡でコレラは治っても、僕が本当にほしかったものは、いくら祈っても、何も手に入りませんでした。
結局、僕が生まれた時から、親は宗教を見ていて、僕のことを見ていなかったのです。
残ったのは、がらんどうの、空っぽの家だけでした。

脱宗教、戦いの日々
中学の、そういった出来事をきっかけに、僕は拝むことはやめました
でも、勤行をしない、会館に行かない、青年部に行かない・・それで、すむわけはありませんでした。
そこから脱宗教のための孤独な戦いが始まりました。
まずは、親が言いますよね・・。宗教をするということが普通の家なのにしなくなるわけですから・・息子がおかしくなったぐらいの感じでしょう。
親は、息子が自分たちの言うことを聞かないとなると、外部の力を使うようになっていきます。
親戚とか、どこかの知らないおじさんとか・・
ある日、夜中に知らないおじさん(学会のエライ人)が家に上がり込んで、なんで学会の活動をしないのか・・という話をしてきました。
「君は、財布の中にお金があるのなら、それを使うだろう?どうして使わないの?」というような話をされました。
僕は「創価学会=お金かよ!」なんて心で突っ込んで「はぁ・・」みたいな気のない返事をしていたように思います。
また、創価学会の友人が「会館に行かないか?」と誘ってきたりと・・そんなことがしょっちゅうありました。

20歳以降にもなると、そういうことも落ち着くかと思うと、逆に酷くなっていきます。今度は創価学会の人たちが大好きな選挙がありますから。
選挙のたびに、親から、親戚から、普段連絡もない創価学会の友人から「選挙があるので公明党に入れてね」なんて言われるわけですから・・うっとおしいったらないですよ。
また、僕もそのころになると自己防衛のためにいろいろ知識をつけて「湾岸戦争で、自民党がアメリカの協力をしているが・・あなたたち公明党は、なんで自民党を批判しない。創価学会は平和宗教じゃないの?」とか。
生きるために、自分を守るために、知識を入れて理論武装なんて・・貴重な青春時代を無駄なことにエネルギーを注いで生きてきたなと思います。

このように、創価学会の教えを伝えていくことを折伏(しゃくぶく)・・って言うんですけど。相手はそれが真実であり、それが正しいことだと思って僕に言ってくるワケですから、話すだけ無駄というか・・タチが悪くて仕方がないです。
しかも、親から、親戚、友人、見知らぬ人らが全員そうなのですから・・ちょっとしたホラーですよ。
当時なんてネットもない時代。今みたいに自分と同じ苦しみを持った人を探すこともできないわけですから・・。
この世界でひとり。
ひとりぼっちの孤独な戦いでしたね・・・。

がらんどうの部屋

宗教が家庭を壊すことはあってはならない

そういう家庭で育った僕ですから、胡散臭いものがずっと嫌いでした。
宗教も、占いも、スピリチュアルも嫌いでした。細木数子さんとか、江原啓之さんとか、オーラの泉とか、ああいうのも嫌いでしたね。
今となっては、あの親が生きるためには心のよりどころ、創価学会が必要だったんだな・・と思えるようになり、スピリチュアルだろうと、占いだろうと、そういうものも苦しい人たちの心のよりどころになるし、いいんじゃないかと思っています
結局、みんな「幸福に生きる」という事を目標としていて、ゴールは一緒なんだろうな・・とも思いますしね。

ただ、僕は今、カウンセラーという仕事をしていますが・・僕のところには、宗教の2世として生まれて苦しんでこられた人がたくさん来られます。また、宗教を信じている人もたくさん来られます
創価学会、エホバの証人、生長の家・・いろいろです。
僕が、生まれてこのかた、宗教というものにかかわってきてひとつ言えることは、どういう宗教をするのも自由ですけど、宗教によって家庭が壊れたり、家族の誰かが苦しむようならば、それは間違っているということです。
創価学会の理念「万人の幸福」「世界の平和」らしいですが・・僕が、この家庭で育って幸福も平和もありませんでしたその中心に創価学会という宗教があったのはいってきたとおりです。
そもそも、自分と家族を幸せにできないで、何が「万人の幸福」、何が「世界の平和」かと思います。
「万人の幸福」「世界の平和」・・というなら、親が創価学会の理念に反することをしてきたのかもしれませんが・・。
それならば、勤行は1日1回朝だけとか、座残会も半年に1回、土日の未来部にも出ない、いろいろな他宗教の宗教的な行事にも寛容であるだとか・・まあ、思いっきり創価学会の教えに反しますけど(笑)。
何より、僕の幸福のために両親が生きていてくれたなら・・僕が苦しむことは無かったのになと思いますね。
結局、ここに書いてきたような僕の苦しみは宗教の家に生まれたから、創価学会だから、ということより、親が宗教ばかりで僕のことを見ていなかったから・・ということに尽きるのかもしれません。

どんな宗教でも、理念は立派で、そこに間違いはないのでしょう。
ただ、親が宗教活動を熱心にするあまり、子供をちゃんとみていないとか・・、宗教によっては体罰を正当化しているものもあり(一時のエホバなど)それを鵜呑みにして家族や、子供を傷つけるとか・・そんなことはあってはならないことだと思います。
そして、そうしなければならない宗教の教えもまた、その立派な教義や理念とかけ離れたことをしていると言わざるを得ないです。

片山太郎として生きていく

有名なカウンセラーさんって偽名というか、芸名というか・・の方が多いように思います。
開業するにあたり、僕も名前を変えようか・・なんて思ったこともありました。
なんせ、名前にコンプレックスがあった人間ですから。
でも、僕は、すべての自分を肯定したかったのです
名前を奪われ、生き方も考えも奪われ、家族の時間もなく、機能不全家族で育った子供で、愛着障害で、アダルトチルドレンで・・それが僕です。
そして、それを自己治療して、そこから解放された・・。それも僕です。
それらすべてがあって今の僕があるのです。
ですから、これからもそんな「片山太郎」として生きていきたいなと思います。

家族や宗教にとらわれて生きてきた僕の回復の目標のひとつが「自立」です。
そういう、存在になれることができたら・・人はこの社会で人と共生できるようになるのだろう・・と思っています。
個人がそうなれた時にはじめて、創価学会の言葉をかりるなら万人の「幸福」と「平和」の第一歩が歩めるようになるのではないか・・と個人的には思っています。

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