社交・社会不安障害(SAD)について

「人目が気になる」

「人の評価が気になる」

「あがり症だ」

こういった苦しさがある人は、社交・社会不安障害なのかもしれません。

もちろん、そういった精神疾患は病院に行かないと診断はつかないのですが。社会適応できないほど苦しい(病気)とまでいかなくともこういった悩みを内々に抱えて苦しんでいる人はたくさんおられるのではないかと推察します。

カウンセリングに来られる人でも、上記の症状を訴える人は多いです。不安障害としても、比率的には多い障害になるでしょう。

今回は、社交・社会不安障害(SAD)についてダン・J・スタイン/エリック・ホランダー編成不安障害(textbook of anxiety disorders)日本評論社から引用する形で説明していきたいと思います。

子供が恥ずかしがる

社交・社会不安障害(SAD)の症状

著書では、デニース・A・キャビラ/マーレイ・B・スタイン社会恐怖の現象学としてまとめてあります。

その中で、社会恐怖(社交・社会不安障害)について以下のように記してあります。

DSM-Ⅲでは、社会恐怖はパフォーマンスに関する状況において注目を浴びることに対する過剰な恐怖と規定されていた(たとえば、人前で話をする。他人の前で食事をする。他人の前で字を書く)そのような状況に暴露されると、典型的にはパニック発作のような症状が起きる(たとえば、動悸、振戦、赤面、発汗)ので、多くは社会的状況を避けるか、大変な苦痛を伴いながら耐えている

とある。

この一文は、社交・社会不安障害の症状を端的に表していると思います。

文中にある、人前で話をする恐怖をあがり症赤面症、人と食事をすることへの恐怖を会食恐怖といったり、人前で文字を書くことへの恐怖を書痙(しょけい)といったりします。これら、すべて社交・社会不安障害の症状です。

顔隠す

社交・社会不安障害(SAD)の原因

また、マヌエル・E・タンサー/トーマス・W・ユード社会恐怖の病因論として以下のように書いてあります。

他の精神疾患と同様、社会恐怖の原因病理は分かっていない

とある。

とは言え、分からないで終わってしまっては辺がないので、もう少し補足しておくと。

社会恐怖の形成に関しては、複数の心理発達モデルが提唱されている

社会恐怖の状況起因モデル(中略)一部の患者ではたしかに外傷体験により恐怖が形成されたことが報告されているが、ほとんどの患者はそのような体験は思い出せない。(中略)逆に、外傷体験を覚えている人は、外傷体験が原因となった障害となるかもしれない

とある。

社交・社会不安障害の原因にほとんどの場合、外傷体験を思い出せない。個人的に外傷体験がないではなく、思い出せないというところがキモだなと思いますが。逆に外傷体験があることで社交・社会不安障害となった自覚があるなら、その治療をしていくのがよいということでしょう。

社会恐怖の人格モデル(中略)シャイネスはほとんどの場合、早期より現れる人格特性である(Buss 1980)。(中略)“恐怖的(fearful)”シャイネスはかなり低年齢に形成されるが、“自意識的な(self-conscious)”シャイネスは思春期前後に形成されるとしている

シャイネス、人見知り、恥ずかしがり屋などと言われるものだが、シャイネスには2種類あり、いずれも若くして恥の概念は発症するようです。

社会恐怖の認知モデル(中略)社会恐怖の人が想定することは、(1)不手際をして、不適切で、恥をかくような振る舞いをしてしまうのだろう、(2)その行動の結果、非常に不幸で破局的な結末になってしまうのだろう、といったことである

社交・社会不安障害の認知(考え)には不手際をして恥をかくのを過剰に恐れている。当人のいうところの失敗をしてしまうと破滅的な結果がくると過剰に恐れている、というところです。

 

社交・社会不安障害(SADの心理療法

DSM-Ⅲに取り上げられてから、社会恐怖に対する精神療法の効果研究が劇的に増加した。(中略)エクスポージャーと認知的再構成を含んだ治療が有効であり、その治療効果は維持されることが、非常に多くのエビデンスによって示されている

とある。また、

エクスポージャーは(中略)否定型抗不安薬を用いた薬物療法で構成された統制治療群(Alstrom et al 1984)と比べて、治療効果が優れていることが証明されている

エクスポージャーは(中略)社会恐怖のモデルでは、エクスポージャーによって恐怖刺激に対する馴化が起こり、恐怖を喚起しない行動が強化されると主張されている(McNeil et al.2001)

社交・社会不安障害の治療のエビデンスは近年、急速に構築されつつあるようです。

また、薬物療法より、心理療法の方が優れた治療効果を得るようです。

 

ハートを持つ医師

まとめ

ここまで述べたように、社交・社会不安障害の治療エビデンスはエクスポージャーと認知的再構築だが。ここでは、まとめとして認知的再構築についての補足をしていきたいと思います。

個人的に、社交・社会不安障害の認知とは以下のようなものだと捉えています。

恥をかいてはいけない。人に迷惑をかけてはいけない。高い評価を受けないといけない。今風に言うと自分軸がない他人軸であるということであろうが。

そんな価値観を家庭内の教え学校での道徳的な教え生真面目に鵜呑みにして信じてきた人たちという印象を強く受けます。

もちろん、それらの教えが正しくないなどという話ではなくて、人に言われたことを鵜呑みにすることこそが問題だという話です。人目を気にすること、人の意見を鵜呑みにすること、それこそが社会恐怖を呼び込んでいくのだと思います。

個人的には、こういったしつけや道徳というものは、反社会性とまでいかなくとも、社会逸脱性があるような子に対してこそおこなうものだと考えますが。

そういったしつけや道徳心を生真面目に言うことを聞いているような子に対して伝え響いてしまうと、人が怖い、人目を気にするといった社交・社会不安障害になっていくのだと考えます。

極端な話、社交・社会不安障害の人には恥をかいたらいい。人に迷惑をかけてもいい(暴力や犯罪は不可)。人の評価を気にしなくていい。ぐらいの認知になったら、だいぶ生きるのは楽になるという印象を持っています。

自分の周りの子供、友人がそういった傾向があるなと思えたなら、ぜひ「あなたは恥ずかしくない。人に迷惑ぐらいかけたらいい。わたしはあなたを評価している」そのような言葉を伝えていってあげてほしいなと思います。

最期に、著書中に

彼らが恐れている非承認に対するエクスポージャーや、より重要なこととして、他者は彼らが考えているほど批判的ではないという情報に対するエクスポージャーを行うことができない(Butler 1985)

とあります。

社会はあなたに批判的ではない。むしろ、そこまでの興味関心さえない。そういった情報に対するエクスポージャーが社交・社会不安障害の人には必要なのです。

書籍「不安障害」
参考・引用書籍

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