現代、ひと昔前では問題にさえされなかったようなことでさえモラハラ、パワハラなどと言われ、うまく怒りがコントロールできないとどんどん生きにくい世の中になってきています。
怒りのコントロールがうまくできないと、社会の中では厄介な人と捉えられ、たった一度声を荒げただけで人間関係を壊してしまうということもあるでしょう。
繰り返していると、社会や家族の中から疎まれ、孤立してしまっている人もいるでしょう。
また、怒りを元にしたさまざまな問題、トラブル。時には取返しのつかないところまで至ってしまう人もいることでしょう。
学生時代ではいじめ、男女の関係ではモラハラ・DV、SNSやネットに悪意ある書き込みをしてしまったなど。離婚、会社を解雇、警察沙汰、訴訟となり、あまりにも多くのものを失ったという人もいるでしょう。
最早、現代社会で怒りをコントロールして生きていくことは、社会的なマナーであると言えるでしょう。
ビジネスパーソンでは、社内研修等でアンガーマネジメントについて学ぶ機会もあるかと思いますが。今回は日本アンガーマネジメント協会代表理事である安藤俊介さんの著書「アンガーマネジメント実践講座」を引用して、怒りについて、怒りのコントロールについて書いていきたいと思います。
怒りは生きていくために必要なもの
まず、アンガーマネジメントは怒らない人になることが目的ではありません。怒ること自体は全く問題ないと書かれています。
アンガーマネジメントは
怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済む、その線引きが上手く引けるようになること
とあります。
怒りの感情については以下のように書いてあります。
怒りという感情は誰にでも備わっている自然な感情の一つです。嬉しい、悲しい、楽しいといった他の感情同様、人に必要な感情です
闘争・逃走反応は生物の恐怖に対する反応です。生物は自分にとっての脅威となる存在を目の前にした時、闘うか、逃げるか、どちらかの反応をするというものです。~私達が怒る時、それは何かが侵害されている、何かの脅威にさらされている、何かの脅威に直面しているということです。~怒ることができない人は自分の身や大切にしているものなどを守れないということになるので、怒るという感情は必要なのです
余談ですが、カウンセリングに来られる方はほとんどが怒れない人です。あるいは怒りの感情を感じにくい人です。やはり、そういった我慢、あるいは感情が麻痺しているような人の方が精神的には危うい状態であると言えます。
怒りがあるというのは、まだそれだけ自分の身を守れていると言えます。
とはいえ、その怒りのせいで、周りを傷つけたり、家族関係や社会関係を壊してしまっては・・繰り返しになりますがいろいろなものを失ってしまいかねません。
しっかりと怒りのコントロールについて学んでいきましょう。
怒りとは何か
怒ることは自然な感情です。だからといっていつでも、何でもかんでも怒ればいいという話ではありません。
以下の4つの特徴がある場合は、それは問題のある怒りであると言えます。
- 強度が高い
怒りが強すぎる。激高したように怒る。
- 持続性がある
いつまでもネチネチとしつこく怒っている。
- 頻度が高い
一日中イライラしている。
- 攻撃性がある
怒って人を責めたり、物に当たる。
以上のような怒り方をしている人は怒りがコントロールできていないと言えるでしょう。
また、怒りという感情は二次感情であると言われています。
怒りの感情というのは、目に見えて表現されている部分のほんの一部で、実はその怒りの裏には、不安だ、苦しい、寂しい、辛い、といった一般的に言うところのマイナスな感情が隠れています。この隠れた感情を第一次感情と言います
怒っている人は怒っているということが一番伝えたいことではなく、その裏に隠されている第一次感情を理解して欲しいと思っている
カウンセリングでも一次感情を聞いていくことで、精神的に落ち着いて、日常の些細なことで怒らなくなっていく人は多くいます。
怒りをコントロールする方法について
ここからアンガーマネジメントの実際についてお話をしていきます。アンガーマネジメントは3つのメソッドから作られています。
著書を簡潔にまとめると以下のようにあります。
- 衝動のコントロール
イラッとしたとき、カッとしたとき、一番やってはいけないことが反射すること。反射的に言う、反射的に動く、反射的に言い返す、仕返すなど、怒りの感情に支配された状態でとっさに何かをしてよいことはない。
衝動をコントロールする時に6秒ルールというものがある。6秒待てれば、怒りの感情が消えないまでも、怒りの感情に支配されることなく、理性的に考え、行動できるようになる。
- 思考のコントロール
怒る理由、それは自分が信じる「べき」が目の前で裏切られた時。アンガーマネジメントでは、この「べき」のことをコアビリーフと呼ぶ。
コアビリーフと上手に付き合えるようになるとアンガーマネジメントは上達するが、コアビリーフは上手に付き合うのが難しいのも事実。難しい理由は、信じている本人にとってはどんなコアビリーフも正解であり、問題があるように思えないから。明らかに反社会的なものであったとしても、少なくとも本人にとっては正しい。
自分を怒らせる理由は誰かであったり、出来事であったりと、自分の外にあるものだと思うもの。しかし、自分を怒らせる理由は自分の中にあるコアビリーフである。
自分の中に原因があるからこそ、自分の感情は自分で責任を持って選ぶことができる。
- 行動のコントロール
怒りの感情のまま行動するのではなく、自らの意志でどのように行動すればよいのかを考え、そして選択する。それが行動をコントロールするということ。
まず、その状況を自分の力で変えることができるか、できないかで考えます。そして、今置かれている場所、役割、立場において重要か、重要でないかを切り分けていきます。どの選択を選ぶかは、自分にとっても周りにとっても、長期的に見て健康的な選択はなんだろうか?という基準で考えること。
怒るということは相手にリクエストを伝えること。相手に伝わる怒り方も技術でしかないので、練習すれば誰でも上達して、苦も無く怒れるようになる。
以上、アンガーマネジメントの3つのメソッドを簡潔にまとめてお伝えしました。
もちろん、その他にもまだまだ著書にはアンガーマネジメントのためのたくさんのスキルや考え方が書いてあります。
ご興味のある方は、ぜひ著書を手に取って読んでいただけたらと思います。
まとめ
著書にもある通り、怒りという感情は二次感情です。
不安だ、苦しい、寂しい、辛い、といった一次感情を話すことで、怒りの火は小さくなっていきます。
また、「べき」「~のはず」「当たり前」「常識」「普通」「~であって欲しい」といった怒りの元となるコアビリーフにも、やはり元になった原因があったりします。カウンセリングでも、そういった話をしていく中でコアビリーフに変化が生じてくるイメージがあります。
アンガーマネジメントを学んでいっても怒りのコントロールが難しいなと思っている人は、一度、最寄りの心療内科やカウンセラーさんを尋ねて怒りの元となる一次感情やコアビリーフの原因の話を話してみるというのもおススメします。
最後に著書の文末にあった言葉を添えて終わりにしたいと思います。
誰かを叩く、誰かの悪口を言う、誰かを妬む、誰かを貶めるようなことを続けたい人はいないでしょう。自分を上げるために怒りを使える人は人から支持されますが、誰かを下げるために怒りを使う人は支持されません。
怒りの感情を持つのは人として自然なことです。そしてその怒りを生かすも、怒りに負けるも、自分ですべて選ぶことができるのです