共依存の始まりは親子関係にある

共依存という人間関係があります。多くは、夫婦関係、恋人関係において使われることが多いように思います。しかし、共依存の始まりは親への依存にこそあったのです。

共依存とは

人の悩みは、だいたい人間関係ですから・・。

人間関係で悩んでいる人は、みんな共依存と言えば、共依存なのかもしれません・・。

共依存とは、簡単に言うと人への依存、人へのとらわれ、人への執着です。

 

多くの人は共依存と聞いてどう思うのか・・。「大好き!この人無しでは生きていけない!」というような、どちらかと言うとポジティブなイメージを持つのかもしれません・・。

しかし、恋人、夫(妻)、親、子供に依存して、心配したり、人を優先していくと・・自分というものがなくなってしまう人が多くいます

それに、実際には、人との関係が永遠に続くことは難しいワケで・・。浮気、離婚、死別・・何らかの理由で離ればなれに。そんな時に、人に依存して生きていた人はどうなってしまうのか・・。空っぽになったり、絶望したり・・うつ病のようになってしまう人も多いのです。

共依存の夫婦だと、伴侶が亡くなって、生きる気力がなくなり、すぐに後を追うように亡くなってしまったり子供に依存していたら、子供が自立すると同時に、空きの巣症候群なんて言ったりしますが、うつ病になってしまったり・・。

それでも、相思相愛の共依存だったら全然いいのかもしれません・・

 

「親が許せない!」「子供に腹が立つ!」「夫(妻)が許せない!」

「これだけ尽くしたのに!」「信じていたのに!」「裏切らた!」「見捨てられた!」みたいに悲しみ、怒りや、憎しみでとらわれてしまっているという人たちも、また多いです。

親子で、夫婦で、本来愛し合うべき人たちが、かつて愛し合った人たちが、被害者だ、加害者だといがみ合ったり、傷つけあったりしている・・・。

非常に、悲しいことですね。

本来、依存や、共依存という言葉はネガティブな意味合いで使われるものです。

ですから、人に対して「許せない!」「腹が立つ!」などと言っている方が共依存という言葉にピッタリな状態と言えます。

 

ギャンブル依存症は、ギャンブルを止めたくても止められないという状態を指す言葉です。借金があって、家庭も壊れた、それでも・・。たとえ、どんなデメリットがあったとしてもやめることはできないのです。

ですから、共依存は、人の事を心配したり、考えたりということを止めたくてもやめられない状態だと考えればいいと思います。

人との関係で、死にたいとか、殺してやりたいとか・・最悪、そんなところまでいってしまう。そこまで、その人へ依存、執着をしてしまう。そういうものが共依存なんだと思います。

手錠で繋がれた男女

典型的な共依存、アルコール依存症の夫とそれを支える共依存の妻

共依存という言葉の始まりは、アルコール依存症の夫と、それを支える共依存の妻という感じで、アルコール依存症の家庭の中で出てきた言葉です。

共依存というものを理解するためには、少しアルコール依存症の家庭の中で何が起きているか・・というのを書いていきたいと思います。

テンプレみたいな話だと・・アルコール依存症の夫が酒を飲む。すると、それを心配して止めようとする妻。そこから、言い合い、喧嘩が始まります。

夫「うるさい!自分の金で酒を飲んで何が悪い!」
妻「あなたの体を心配しているの!頼むからお酒を止めて!」・・と。
それで、お酒が止むわけもなく、今度はその妻の態度を理由に旦那はさらに酒を飲むようになる・・・みたいな。

そんな感じで、依存症というのは家族を巻き込む形で進行していきます。

 

イネイブリングという言葉がありますが・・イネイブルとは○○することを助けるという意味です。イネイブリングを尻ぬぐいとも言ったりしますが、共依存者はアルコール依存症者を、心配、監視、恫喝・・し、ストレスを与え、よりアルコール依存症という病を進行させる手助けをしています。当然、そんなことは無自覚で、自分は被害者だと思いながら・・です。そういう共依存者をイネイブラーと呼びます

まあ、別に・・イネイブラーが居ても居なくても依存症は進んでいきますが・・共依存者は巻き込まれていくように、仕方がなくイネイブリングするようになっていくのです。

自分の人生じゃなく、誰かの手助け、イネイブリング(尻ぬぐい)をしていませんか?

 

少し、僕の実家の話をすると・・。僕の父親はアルコール依存症で、母親は共依存でした。上記したようなテンプレのやり取りを僕が生まれた時からずっと見てきました。そして、父親は母親を怒鳴って、殴って・・

母親は決まって「もう・・お父さんとは無理じゃわ。別れようと思うんじゃ。お母さんについてきてくれる?」みたいな話を僕に聞かせてくれました。

小さい時からそういうやり取りを見てきて「お母さんは、なんで別れないんだ?別れたらいいのに?」と・・どちらかと言うと冷めた目で見てきた気がします。

ほっとけばいいのにほっとけない。別れればいいのに別れることができない。

それは、なぜか?

お母さんは自分ひとりの力で生きていけない。お父さんに依存しないと生きていけない。寂しくて、自立できていない共依存だったからです。

・・そして、僕もまた、そんな家族にとらわれてきた・・・

夫婦喧嘩と子供

共依存の始まりは親子関係にある

依存、共依存の根っこには寂しさがあります。

寂しさの根っこには、親子関係があります。

最近は、アダルトチルドレンとか、愛着障害という言葉がありますけど・・それですね

子供の時から、親子の愛着(ふれあい)が不足してきたから、寂しく育ち、人、恋人などに依存するようになったということです。

 

しかし、アダルトチルドレンや、愛着障害の人たちが、みんな共依存の関係にとらわれて苦しんでいるとは限りません

とりわけ、どういう親子関係で育った人たちが共依存の関係で苦しむのか・・という事を理解しておいた方がよいでしょう。

親が忙しい、親が可愛そう・・そんな家庭で育った子供たちは、親を助けたい、親を救いたいと感じ、行動する子供となるでしょう。

そんな、子供が大人になった時・・やはり、誰かを助けたい、救いたいなどと考え、共依存の関係にハマりこんでいくのです。

共依存の関係で苦しんでいる人の多くは、寂しさだけではなく・・「誰かを助けたい」などと思って生きてきた人が多いです。

 

またしても、僕の家庭の中の話ですが、子供の時から母親から、こんな話を聞いてきました・・

「お母さんは、おじいちゃんに暴力を受けて育ってきたんよ。だから、暴力を絶対に振るわない、優しい男性を結婚相手に選んだ。それなのに、結婚したら全部嘘で、酒は飲むわ、暴力を振るうわで・・お母さん、騙されたわ・・」

そんなような話を、小さい時からよく聞いてきました。

親の暴力を嫌って、親に似たような人は絶対に選ばないと考えて生きてきて・・気が付いたら、親と似たような暴力を振るう人を選んで、共依存関係になった。それが、お母さんの人生です。因果なものですね・・。

 

これを読んでいる人も、親と似たような人を好きになって苦しんでいるという人も多いと思います。

少し古い漫画ですけど、倉田真由美の「だめんず・うぉ~か~」という漫画がありましたけど、アレですね。

ダメな男(だめんず)ばかりを好きになってしまう、男を見る目がない女(だめんず・うぉ~か~)。みたいな・・

僕のお母さんみたいに、暴力を振るわれて育って、暴力を振るう男性を好きになるという。こういうのは典型ではないでしょうか・・

あるいは、既婚者ばかり好きになる女性は、お父さんが浮気性だったとか・・

アルコール依存症の父親の元で育った娘が、結婚した男性がギャンブル依存症だったとか・・

なんで、こんなことになるのでしょう?

僕は、お父さん(お母さん)と同じような人を好きになることで、親に対する寂しさの埋めなおしをしようとしているのではと思っています。

でも、親に対して寂しさを抱えた人が、お父さん(お母さん)と似たような人を選んだらどうなるのか?

それは、答えは火を見るよりも明らか・・ではないでしょうか・・。

うまくいかないのは当然です。心通わないのは当然です。

だって、相手はわたしに寂しい思いにさせた、親に似た人なのですから・・・。

ピエロの操り人形

共依存は永遠の片想いである

共依存とは、片割れがいて初めて成り立つ関係です。

ですから・・共依存=共に依存なのです。

僕のお母さんが共依存だったと言ってきましたが、お父さんもまた共依存なのです。ただ、お父さんはそんなに苦しんでいない。

それは、どちらかと言うとお父さんは加害者だからです。

でも、好きになって結婚した相手を愛せないどころか、怒鳴ったり、殴ったりする・・そんな男もまた病んでいるのではないでしょうか・・

 

このように、共依存の関係が、支配・被支配、被害・加害関係になっている人は多くいます

分かりやすいものは、モラハラ、DVをする男と、それに耐える女、みたいな感じですね。

また、時期が来て攻守が入れ替わるというのもよくあります。例えば、アルコール依存症の旦那に暴力を振るわれてきた妻が、旦那が病気になって弱くなると、仕返しに暴力を振るうようになるとか・・・。

親の介護が始まって虐待するようになるのは、このパターンですね。

あるいは、お互いキツい性格で、いつも言い合い、いつも喧嘩、みたいになってしまっているパターンも多いです。

 

共依存は人に依存しているといっても、特定の個人に執着しない人もいます。

恋愛をしていても、好きな人ができたらすぐそっちに乗り換えて・・それを延々している人とか。

原因は、寂しさですから・・。寂しさを埋めるための共依存もいろいろなパターンがあるものです。

 

共依存の関係は、彼が彼女を見ていない。

夫が妻を見ていない。

親が子を見ていない。

みんな、どこを向いているのか?

みんな、自分の親に対して寂しいのです

親の方を向いているわけです。

親に対する寂しさ、不足を、彼(彼女)に求めていたりするのですから・・・

ですから、いつまでたってもピントが合わない。いつもすれ違っている。

共依存者が、一生懸命「寂しい!」「愛して!」と叫んだら、一瞬だけ分かり合えるような瞬間もあるかもしれないが・・・でも、やっぱり、瞬間だけで分かり合えない。

共依存は相思相愛になることは難しいでしょう。

共依存は永遠の片想いを生き、ずっと寂しいままなのです。

失恋した女の子

共依存からの脱却

諦めと自愛

「人は変わらない」という諦めから共依存からの脱却はスタートする。

僕の今までの人生は、アルコール依存症の父親と、共依存の母親にとらわれて。精神科で働くようになって、こんなことを勉強したり、考えたり、もう25年近く経ちました・・。

また、恋愛でも彼女に浮気をされて、仕事ができなくなって、家に引きこもったり。その後、何年もその彼女に思考がとらわれたり・・。

そんなこんなで、どれだけのものを失ってきたか・・・。

僕も立派に共依存だったなと思います。

 

さて、僕は、精神科で勉強してきたことをいかんなく発揮して、両親にたくさん話をしてきました(共依存だから 笑)

「アルコール依存症は○○で・・・」「共依存は○○で・・・」

すべては、僕の「分かってほしい。理解してほしい」という寂しさの表れだったのでしょう。

それで、両親は変わったと思いますか?

答えは、1ミリも変わりませんでした。

これを読んでいる人たちもそうだと思います。

どれだけ、尽くして、費やして、説明して、怒っても分かり合えないのです。

分かり合えないから、苦しんできたのではないでしょうか・・・

親(あるいは子や配偶者など)は変わりません・・正確には、自分の望むように親(あるいは子や配偶者など)が変わってくれることはありません。

諦観、諦め・・からしか共依存というものは回復していかないでしょう。

 

共依存の対象幼少期の親にピントを合わせること。

今、彼氏(彼女)との関係、夫(妻)との関係、子供との関係、職場・友人関係で共依存となっていて悩んでいる人たちがいたら・・・。

まず、その人との関係を考えていても回復していくことはないと思ってください。

原因は親子関係ですから・・。

幼少期の親子関係の苦しみと向き合っていくしかないのです。

今の人間関係にとらわれると、結局、分かり合えない人間関係にとらわれているので・・どんどん、寂しくなったり、怒りが出てきて、感情のコントロールが効かなくなる危険があるでしょう。

向き合うべきは、自分と親との幼少期の関係のみです。

幼少期の親というものにピントを合わせて向き合っていきましょう。

 

共依存(寂しい人や、親に類似した人、親)を追うのではなく・・親とは違う安定した人、安心できる人と過ごしましょう。

どんな依存症でもそうですが・・・共依存も病が進めば、進むほど、共依存の対象しか目に入らなくなります。

そうなって来ると、人のアドバイスなんて聞けれなくなるし、優しくしてくれる人を逆に煩わしく感じたりするようになるでしょう。

そこまで進行すると、なかなか回復も難しくなるのですが・・・

そうなる前に、できるだけ共依存の対象とは離れて、安定した、安心できる人と過ごすようにしましょう。

 

自分を愛すこと

共依存の原因が「寂しさ」にあるなら・・

寂しさを治していくしかありません。

そのためには、月並みですが、自分を愛することです。

自分のお金と、時間を、自分のためだけに使いましょう。

自分が楽しめること、安心できることをしましょう。

 

今までの自分が親のために生きてきたのなら、その頑張りを褒めてあげましょう。

もう、親のために生きなくていい。自分のためだけに生きて行ったらいいと・・自分を許してあげましょう。

それが、自分を愛していくということです。

 

いつか、自分を愛せれるようになったら、勝手に他人を愛せれるようになるでしょう。

親との関係も良い方向に変わっていくことだと思います。

依存の反対は自立です。

共依存の反対は共生です。

これを読んでいる人が、いつか自立し、人と共生できるようになることを願っています。

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