機能不全家族で育った人が良い家庭を作るために

僕は、長らく、家族というものが分かりませんでした。

自分が結婚するという時も、子供が生まれるという時も不安と恐怖でしかありませんでした。

そんな状態で結婚、子育て。

うまくいくはずありませんでした。

嫁とは、よくケンカをし。子供たちは不登校になりました。

そうなった原因は、僕が機能不全家族で育った子供だったからでした。

日本の家族の80%は機能不全家族である

機能不全家族という言葉、聞きなれない人は聞きなれないかもしれませんが。

僕は、長年、依存症という病を扱う現場で働いてきましたが。

そこでは、機能不全家族という言葉は日常的によく聞く言葉でした。

 

また、ここまで読んで、

「ウチは良い家族、普通の家族なんで関係ない」と思われる方も多いと思うのですが。

実は、日本の80%の家族は機能不全家族であると言われています。

機能不全家族で育った方の多くは「家族、親は大事だから」という家族神話の中に自分の感情を蓋をして、家族の問題に気づかない人も多いです。

今一度、自分の家族はどんな家族だったのか?という振り返りをしてみるのも良いことかと思います。

 

今回は、

  1. 機能不全家族とはどんな家族か?
  2. 機能する家族、良い家庭とは?
  3. 機能不全家族で育ったひとが、良い家族を築くには?

という3点を中心に、アメリカの精神療法家、西尾 和美さんの著書機能不全家族 親になりきれない親たちという本を参考にお話ししていきたいと思います。

機能不全家族

機能不全家族とはどんな家族か?

機能不全家族とはどんな家族関係、親子関係のことを指すのか、書いていきたいと思います。

西尾さんの著書によると、

機能不全な親とは、子どもに安全と保護を与えられない、子どもの人格を尊重できない、子どものもって生まれた気質や個性を受けいれられない、適当な愛情と規律を与えることができない親のこと

とあります。

なかなかに耳が痛いですね(汗)。

 

続いて機能不全家族、機能不全な親子関係の具体例として、以下のようなことが書かれています。

  1. 虐待・性虐待
  2. 精神的虐待
  3. 愛情表現がない
  4. 存在の否定
  5. 親からの過度な期待
  6. 言うことを聞きすぎる親
  7. 依存症父と共依存母
  8. 親の持つ人間関係

などです。

それぞれ、著書から要約して説明してきましょう。

 

①虐待・性虐待

言わずもがなですが、虐待・性虐待ほど子供を傷つけるものは無いでしょう。

僕のところでも虐待を受けてきたという人も少なくありません。しかし、そういった虐待を受けてきた方たちの親が、虐待のニュースを見ながら「酷い親がいるものだ」と泣いていたりと、虐待の自覚が無い親というものもあります。

しつけと称した虐待スキンシップのつもりで性虐待といった具合に、知らず知らずに子供を傷つけてしまっていることは多いです。

また、意外と虐待のパターンとして多いのが、大事に育てていたペットを、親が気に入らなくて勝手に捨ててしまったというような出来事。子供が大事にしているおもちゃや、ペットを親が無断で捨てる、あるいは殺してしまうということも立派に虐待なのです。

虐待を受けて育ってきた人の中には、PTSDの症状で絶えずフラッシュバックに悩まされたり、パニック症状が出て社会生活をまともに送ることができなくなっている人もいます。また性虐待を受けてきた人は、男性恐怖から、男性とのお付き合いができなくなってしまった人もいます。

②精神的虐待

精神的虐待は親の態度、言葉、しぐさ、人間関係、コミュニケーションのとり方によって子供の安全をおびやかすものから、子供の人格を踏みにじったり、個性や気質を押しつぶしたりするものまでさまざまなものがあります。

「ほんとにだらしがない子ね」「なにをやってもダメな子ね」親からいつも嫌味や皮肉を言われ育った人は、大人になっても罪の意識が抜けません。

「好きなようにしなさい」と言いながら、いざやるとなると「何をやっているんだ」というダブルバインド、矛盾した言葉を言われて育つと、自発的に何かをすることができなくなっていくでしょう。

③愛情表現がない

抱きしめる、撫でる、やさしい言葉をかける、愛情にあふれた表情…こうした両親、家族からの愛情表現は子供の健全な発達には欠かすことができない要素です。

親に愛情をかけてもらえずに育った人は、ひとにもうまく愛情表現ができない大人になるでしょう。

④存在の否定

「あんたなんか生むんじゃなかった」「男の子が良かった」「あんたさえいなければ」などそういった親の言動は、子供の存在を根本から否定する言動です。

また、親の家出や、自殺は子供への究極的な拒絶とも言えます。

存在を否定されて育てられた人は、自己を肯定することができなかったり「生まれなければよかった」自己否定するようになるでしょう。

また、自傷行為にはしったり、自殺願望を抱くようになることも珍しくありません。

⑤親からの過度な期待・干渉

どれだけ頑張っても親から認めてもらえなかったり、いつも他人やほかの兄弟姉妹と比較されたり。あるいは、プライベートな日記やLINEを読まれるなどでも、子供が傷つく要因になります。

そんな中で育つと、プレッシャーに弱くなったり人目を気にするようになったり、監視されているのでは?と被害的なことを考えたりするようになります。

⑥言うことを聞きすぎる親

子供を猫可愛がりし、ペットのようにあつかったり子供に媚びて、なんでも言うことを聞くことも子供の人格を無視した態度といえます。

僕の経験上、ほとんど見たことのない親子関係ですが。やはり、大人になって親と社会とのギャップに苦しんだりするようです。

⑦依存症父と共依存母

親が何らかの依存症であった場合(薬物・アルコール・ギャンブル・仕事など)、もう一方の親は相手をコントロールしようとするあまり、共依存症となってしまうことがほとんどです。

そういう家庭で育つと、大人になって何かことがおこると動悸がして、苦しくなってしまったり。いつも、何かおきるのではという不安を抱えるようになってしまいます。

⑧親の持つ人間関係

直接、自分に向けられた態度や言葉でなくても、親のもつ人間関係によって子供が傷つくことは珍しくありません。

とくに両親仲が悪く、怒鳴ったり、憎しみあったり、ろくに口もきかなかったりしていると、いつも家庭内に緊張感が漂い、子供の心が休まるひまがありません

夫婦関係だけでなく、親と祖父母との関係が悪い場合にも、子供はおおいに傷つきます。嫁姑問題があり、そのことで両親がいがみ合いをしていたら、二重三重に子供は傷つくでしょう。

家族がいがみ合うような家庭で育ったら、たくさんの人や、集団の中にいることが苦手になります。友人たちと遊んでいても居場所がないと感じたり、どう振舞えばいいのか分からなくなったりします。また、ガヤガヤとした喧騒に恐怖を感じたりする場合もあります。

 

以上のような家庭のことを機能不全家庭とよびます。

とりわけ、どういった家庭で育ったら、どういった苦しみを持つようになるのか、どういった大人になっていくのかということがつながるようにまとめてみましたので。

是非、参考にしていただけたらと思います。

 

機能する家族、良い家族とは

「普通の家族って、どんな家族なんですか?」

カウンセリング中、よくこんな質問を受けます。

「普通って難しいですよね。ただ、夕方の公園に行ったら、普通の家族というのが見られると思いますよ」

とお伝えしています。

公園で子供と楽しく遊べる親が、家に帰って身体的・精神的虐待をしているということはないでしょう。

家族関係・家庭環境というものは、カプセリングとも言いますが、悪くなれば悪くなるほど閉じていく傾向が強いからです。

 

しかし、今回はもう少し具体的に。

機能する親、家族というものはどういったものかお話できればと思います。

まず、西尾さんの著書を要約すると、

親と子が、お互いに1人の人間として尊重し、信頼し合える良好な人間関係ができていることが肝要である

いかなる人間関係においても、自分が相手からされたくないことは、相手にもそれをしてはいけません。親だから、あなたの子供だからといって何を言っても許されるということはありません。

子供を頭ごなしに叱ってはいけません。人はだれでも、自分の考え、感情、能力、体力の範囲内でベストを尽くしています。たとえこちらから見て、相手が怠けているように映ったとしても、その人にとっては、精一杯努力した結果なのです。自分の物差しで測ってしまいがちですが、それは絶対的なものではないのです。

子供との関係で口にしてはいけない言葉があります。それは、子供の人格を否定する言葉です。「お前はダメなやつだ」「あなたは嫌な子ね」というような相手の存在を否定する言葉は使ってはいけません。

子供を理解すること、話を聞くこと、話しやすい雰囲気を作ること。

長年、親子関係で傷ついてきた人たちのカウンセリングをしていると「分かって欲しかった。話を聞いて欲しかった」という言葉をよく耳にします。

問題のある親子関係において、親ばかりが話をし、子供の話は全くといっていいほど聞いてもらえていないということがあるようです。

 

親業について

また、西尾さんの著書の中にも「親業」に対する記述がありますが、親業とは、アメリカの心理学者トマス・ゴードン博士が創案したものですが、どういったものか簡単に説明すると。

子供の育成問題、非行など親の問題にされてしまう。しかし、親も親になるための勉強も、訓練もしたことがないわけです。親になるということは人にとって、社会にとっても一大事業であるはずです。そういった思いでできたのが「親業訓練」(P.E.T=Parent Effectiveness Training)という訓練です。

 

その中で少しあげるとしたら、

リフレクティブ・リスニングという上手な子供の話の聞き方というものがあります。

例えば、

子供:「お母さんは、いつも話を聞いてくれない」

母親:「そんなことない」と防衛的にならず、

「あなたは、お母さんが話を聞いてくれないと思っているのね」

というように、相手の言うことをリフレイン、復唱していく。すると相手は話を聞いてくれたと思えるという方法です。

また、アイ・メッセージという親の考えや願いを効果的に子供に伝える方法があります。

I(アイ)、私を主語にして、自分に責任を置いて述べていくという話し方です。

例えば、「何度も呼んでいるのに、あなたは返事をしない」というようなものをYOU(ユー)メッセージと言いますが、アイ・メッセージになると。

「お母さんが何度も呼んでいたのが聞こえた?何度呼んでも返事がないから、お母さん寂しかったよ」という感じになります。

私はこう思うけど、あなたはどうしたい?という伝え方は、相手の考えを否定せず、尊重した会話になります。

 

というようなことが著書には書いてありますが。

平たく言うと、子供が話しやすい温かい雰囲気の家族で、子供の話をしっかり聞けるようなかかわりができるというのが良い家族なのではないでしょうか。

そのような家庭であれば、機能する家族、良い家族と言えるのではないでしょうか。

温かい家族

 

機能不全家族で育ったひとが、良い家族を築くには

トマス・ゴードン「親業」の著書にはこうある。

親に

「子供よりも自分たちの方が変わるべきと言われると、それをかなりの脅威と感じてしまうことがある」「親業は子供を育てる意味で使われることが多く、子供が親に合わせ適応することになっている。問題児はいても、問題親はいない」「どの親でも、伴侶、友人、親戚、上司、部下など自分との関係において、深刻な対立を防ぎ、その関係をうまく維持していくために、自分が変わらなければならないときがあったと思う」「同様に、親も子供の行動に対する態度を変えられる

とあり、「親業」では、親側に対する信頼度は高く作られている感じです。

 

しかし、西尾さんの著書には、

「どんなに子どものことを思っても、自分に身についてないものを、子どもに与えることはできません」「親が罪の意識にさいなまれていたり、心が不安定だったり、怒りが爆発した状態であったりすれば、子育てどころではありません」「自分が子どものころ親から愛されたという経験がないために、自分の子どもも愛することができないという例がかなりあります」

とあり、子供をうまく愛せない親の根本的問題というものにも言及してあります。

 

僕のところでも、社会に適応できていない親が、親になっている場合もあります。

精神的な問題などで仕事をしておらず、また友人もいなくて孤立している。そんな風に苦しんでおられる方が親としてあるということも事実です。

また、子供とのカウンセリングで親との関係で苦しんでいるという話が出た時に、僕が「もう少し、子供の心配をしすぎず見守っていただけたら・・」とお願いすると「親が子供の心配をするのは当たり前でしょう」などと言われ。親自身が、親子関係で子供が傷ついているということにさえ気づいていないということは普通にあります。

そういう家族関係、親子関係を見るたび、現実は難しいものだなと感じることはしばしばです。

 

また、愛情のある眼差し、温かい態度、穏やかな口調、優しく触れることなど。

愛情というものの理解は非常に感覚的で、なかなか勉強してどうにかできるものではない部分があるのは確かです。

 

最後に

機能不全家族で育ったひとが、良い家族を築くにはどうすればよいかということです。

もし子育てで、すでに、自分の感情がコントロールできない状態、親子関係が切迫している状況があれば、速やかに児童相談所などに連絡をしたり、専門の心理カウンセラーに相談するのがよいでしょう。

そして、自分を愛せなければ、人を愛せないという言葉がありますが。子育ても同じことだと思います。自分を愛せないと、子供は愛せません

自分を愛する方法を知ることが大事です。

小さかった自分をイメージして。

「よく耐えたね。よく頑張ったね」

「あなたはひとつも悪くないよ」

「生きてきてくれて、生まれてきてくれてありがとう」

そういった言葉をかけて抱きしめてあげてください。

そういった言葉をかけて温かい気持ちになったり、自分が愛おしく感じて涙が出るなら、うまく自分が愛せているのではないでしょうか。

過去との向き合いや、過去の自分を愛することが怖く感じたり、ひとりでは困難だと感じたら、専門の心理カウンセラーに相談するのがよいでしょう。

セルフハグ

ここまで読まれて、親業の勉強をするもいいですし。いくらテクニカルなことを学んでも、自分が変わらないといけないと思うなら、自己を愛する療法をしていくことも、どちらも良いことだと思います。

親として、良い親になりたい、良い家族を作りたい、そう思えることがすでに素晴らしいことだと思います。

僕も、子供の親として、まだまだ未熟だなと日々感じております。

妻を愛し、子供を愛し、良いかかわりをし、良い家族を作っていきたいと切に思っています。

これを読まれた方が少しでも何かに気づけたり、良い家族を作るという意識を持つことができて、幸せな家族を作っていくきっかけになれたなら幸いです。

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