精神科における科学的根拠があるとされる治療について

EBM(エビデンスベースドメディスン)という言葉があります。

日本語訳にすると、科学的根拠のある治療となると思います。
そんな、当たり前のことをと思いますよね。
ほとんどの人が、病院、精神科、心療内科に行けば、最新の精神科医療を受けることができると思っている。
そして、行けば治るぐらいに思っているのではないでしょうか。盲目的に

科学的根拠のある治療とは

では、現代の精神科医療において、科学的根拠がある治療とはなんでしょうか?

様々な分野、基礎研究、精神分析学、脳科学、心理学、行動分析学などなどありますが。治療となると、薬物療法認知行動療法、この2つに集約されていると言ってよいのではないでしょうか。
特に、日本の精神医療においては、薬物療法がその中心に、ドンっと鎮座しておりますね(汗)。

精神科における薬物療法

まず、薬物療法について、私見を述べると。

そもそも、僕は依存症の専門家であり、依存症の治療において、薬物療法は効果がないというのが長年の定説です。

近年でこそ、依存症治療において、効果的な薬物が開発されつつあります。
例えば、ニコチン依存性に対するチャンピックスであるだとか、アルコール依存症に対するレグテクトであるとか。
これらは、それぞれの物質の欲求を抑える薬です。

他にも、海外では、飲酒をコントロールするための薬であるとか、覚せい剤の欲求を抑える薬などが、すでに開発されています。
それ以外にも、禁断症状である、イライラ感、焦燥感に対する薬であるとか、同じく、禁断症状である不眠に対しての睡眠導入剤であるとか。依存性に対して、そのように薬物療法を使った回復のアプローチも増えてはきています。

しかし、依然として、依存症治療の中心にあるのは、入院中は認知行動療法という心理療法です。
そして、自助グループといわれる回復支援団体へ繋げ、そこでミーティングと言われる語り合いの中で回復するとされています。
バッサリ言ってしまうと、やはり、昔も今も、依存症を治す薬はないということです。

そういった環境にずっといたものですから、僕としては、薬では治らない病気があるということは普通のことなのです。
しかし、中には薬が効かない病気は病気ではないとする精神科医もいるのです。
まったくエビデンス(科学的根拠)がない精神科医も中にはいるのです。
間違っても、僕の知り合いや友人の医師にはそのような人はいませんよ。

一般人の人の理解もそんなものかもしれません。
でも、それは偏見というものです。そんな文句はWHO(世界保健機構)にでも言ってください(笑)。

繰り返しますが、今後は分かりませんが、現在使われている薬では治らない病気があること。
薬物療法が効かない病気があるということです。では、他のアプローチをしなければいけませんね。

薬によってしか治らない病気もある

前回、薬では治らない病気があるということを話しましたが、だからといって、薬によってでしか治らない病気もあるわけです。

統合失調症は薬でしか対処できない病気です

逆に、それ以外の病気は薬では対処しきれない病気、ではないかと僕は思っています。

薬

では、薬以外のエビデンス(科学的根拠)について

認知行動療法について

認知行動療法は依存症治療の中で延々と行なわれてきた治療です。
それこそ、40年ぐらい。
アルコール依存症の分野では久里浜式といわれるプログラムで、薬物依存症の分野ではSMARPP(スマープ)という治療プログラムが有名です。
海外に目を向けると、依存症治療において一番権威があるのは、マトリックス研究所とUCLAの共同開発であるマトリックスプログラムであるが。マトリックスプログラムは卑怯なところがあって。
もっともエビデンス(科学的根拠)の高い最新の治療法をすぐに取り入れるという節操のなさがあります。

例えば、最近、欧米を席巻している、マインドフルネスという第三波の認知行動療法ともいわれる治療ですが、すでに、マトリックスプログラムに組み込まれているわけです。

さて、このように、素晴らしくエビデンス(科学的根拠)のある認知行動療法ですが、依存症の中で、一番メジャーなアルコール依存症に対しておこなった結果どうでしょうか。
入院期間はだいたい2ヶ月、その間、認知行動療法をおこなうわけです。さて、何割が回復するでしょうか?

研究内容によってばらつきはあるものの、だいたい1年断酒率が20~30%です。
当然ですが、2年目、3年目はもっと断酒率は低下していきます。

やらなずに死んでいくよりは、やったほうが回復する確率は高いのですが、ここまでエビデンス(科学的根拠)がある治療が、この程度しか回復しないというのはびっくりするデータではないですか。

ちなみに、酒で内科に入院し「このまま酒を飲んだら死にますよ」と言われて、自然回復(勝手に断酒)する人も2~3割いるとも言われています。

誰も今までも、これからも言わないであろうから、ここは、僕が、勇気を出してはっきり言いましょう。

認知行動療法は効果がありません!

うわ~言ってしまいました。

認知行動療法はなぜ効かないのか?

認知行動療法が何故、効かないのか?その答えを言いましょう。

ズバリ、認知行動療法の専門家が治療をおこなってないからです。

認知行動療法の専門家とは誰を指すのか?もちろん看護師ではないですね。
医師?精神科医も専門家ではないです。

では、臨床心理士?一般的には認知行動療法の専門家は臨床心理士という理解でしょうが、臨床心理士も認知行動療法の専門家ではないことがほとんどです。ガーンですね(汗)。

専門家が行っていないという根拠

ひとつ、僕、個人のことを話しましょう。僕はもともと看護師です。
依存症病棟に来て、最初の1年はルーチン業務を覚えるので精一杯でした。

それが、2年目には、認知行動療法をやってました。
もちろん、久里浜病院というところで研修は受けました。

医師の見よう見まね、指導も受けましたよ。
でもズブの素人です(エッヘン)。心理学の勉強なんてしてことないですからね(エッヘン)。

高額の入院費を出して、素人が治療しているわけですからね。
このブログを見る人が見たら腹が立つかもしれませんね。
まあ、こういった経験をしてきたから、今の僕があるのですから勘弁してください。

でも、なぜ、認知行動療法を医者がせずに、僕のような素人がしているのかです。
本来、病院で認知行動療法をすると治療としてお金がとれるのは、医者のみです。

臨床心理士は、まだ、国家資格ではないのでお金がとれないんですね。
簡潔にいうと、認知行動療法は時間も手間もかかる。
医者は忙しすぎるんです。だから、臨床では作業療法士や臨床心理士、そして、僕のような看護師が認知行動療法をしているのです。

精神科医や臨床心理士が必ずしも認知行動療法の専門家ではない

精神科医や臨床心理士が認知行動療法を学んできた人、専門家、スペシャリストではないと言いましたね。

それも、僕、個人の話をせねばなりませんね。
さて、長年、依存症の治療にあたってきた僕は、認知行動療法を正しくおこなえば依存症は治るのではないかという感触を得るに至ったんです。

より認知行動療法のことを深く学ぼうと、臨床心理士になろうとしたんですね。

そして、知り合いの臨床心理士に、大学院に入って認知行動療法の勉強をしようと思う、どうしたらいい?って聞きました。

みなさん、いい人でね、川崎医療福祉大学の心理学科の教授と岡山大学の心理学科の教授と会うことができました。
そして、認知行動療法を学びたければ、研究チームがある大学に入った方が良いと教えてくれました。

その大学は、今なら、早稲田大学、東京大学、千葉大学、広島大学ぐらいとのこと。
臨床心理士が取得できる大学が全国で160校ぐらいある中の、たったの4校ですよ。

どうりで、僕の知り合いの臨床心理士も認知行動療法について詳しくないはずです。
とにかく、それぐらい、心理の分野の裾野は広いのです。

結局、両教授には話を聞くだけ聞いて、臨床心理士にならなかったんですけどね。その節は、お世話になりました。

繰り返しになりますが、認知行動療法がなぜ効かないのか。
その答えは、認知行動療法の専門家が日本には極端に少ないために、ほとんどの人が、認知行動療法を正しくあつかえていないからです。

 

認知行動療法 認知療法と行動療法

このことには誰も異論はないと思います。

しかし、友人の臨床心理士はこう言っていました。

「今の心理療法は玉石混交で何が正しくて、何が間違っているか分からない」と。おかしいですよね。
認知行動療法が一番エビデンスがあると知っていながらいろいろあって分からないと言う。
ようは、大体の心理療法が認知行動療法であるために、認知行動療法の裾野が広がりすぎて、分からないということになっちゃっているということなんです。
なんでこんなことになっちゃったんでしょうね。

そのために、認知行動療法とはなんなのか、
認知行動療法はどういう経緯でできたのかを知らなければなりませんね。
けっこう、僕の憶測も入っているので、ご了承下さい。

認知行動療法は、認知療法と行動療法と別々の治療を2つにくっつけたものです。

これが、そもそもの混乱の要因で、間違いであったと言えるのですが。
そんなこと言っちゃうと、身も蓋もないので、もう少し続けます。

認知療法

認知療法とは、アーロン・ベックというアメリカの精神科医が1963年に作った治療法です。
認知療法は、とりわけ、うつ病の治療として有名です。
うつ病者は悲観的な考え方を持つ、そういった考えを「認知(考え)の歪み」とし、考えを修正するために編み出された治療が認知療法です。

この考えは、僕はまったく間違っていると思っています。
だいたい、「あなたは、認知が歪んでいるので修正しましょう」って、失礼ですよね。
まあ、僕もずっと言ってきましたが、よく怒られなかったなあと思います。

行動療法

では、行動療法とはどんなものかです。
一般にバラス・スキナーというアメリカの心理学者が行動分析学及び、学習理論の祖と言われています。
しかしながら、スキナーがおこなったことはパブロフの条件反射をレスポンデント条件付け、ソーンダイクの試行錯誤学習をオペラント条件付けと再定理化したことだと思います。
そのことにより行動分析学がおこったと考えることもできますが、ワトソンが行動主義を提唱した時から、その源流は100年以上前からあったと考えるのが通常であると考えます。

行動主義や行動分析学について、もう一つ、ワトソンやパブロフも、その後継であるスキナーも、いつの時も、同じような批判をされています。

それは、「人間と動物は違う」という批判です。
行動主義や行動分析学はあまたの動物実験の中で作り上げられてきた学問です。

S-R理論について

動物に刺激を与え、それに対する反応を見る。
これを、刺激(S)と反応(R)、S-R理論と呼びます。

スキナーはスキナー箱という動物実験のための装置を開発したことでも有名だが、露骨に「自分の子供を箱に入れて育ててるらしいぞ」と悪質なデマを流布されることもあったようです。

行動療法の次に認知療法、そして認知行動療法

話は長くなりましたが、要するに、順番が大事なんです。
最初に行動主義、行動分析学があった。
それに対する批判として「人間と動物は違う」という考えがあり、認知療法が生まれていったという順番ですね。
そして、行動療法と認知療法が出会って、認知行動療法ができたという経緯です。

認知(考え)を変えても病気は治らない

ベックの認知療法は、自動思考のある人、認知が歪んだ人の考えを修正することによって病気が治るとする治療方法です。

 

さて、考えが変われば、その人は変わって、病気が治るのでしょうか。

答えは「治りません」です。

なぜ、僕が、そう言い切れるか。まず、ずっとかかわって、見てきたからです。
自動思考の人を、認知が歪んだ人をです。もっとも端的で、分かりやすい、それらを依存症といいます。

依存症は、依存行動に、依存物質にとらわれて、認知が歪んだ人々です。
まあ、一般によく、そう言われます。精神科に入院して、家族が横で泣いていても「自分の金で薬・酒をやって何が悪いんなら。お前らには迷惑をかけてない」などと平気な顔で言いますからね。

特にタチが悪いのはギャンブル依存症で、借金を何千万としようと、本人は痛くも痒くもないですから。
話をしていても、どこか、人ごとのように一見、見えてしまいます。依存症の人って、サイテーですね。

こういった、依存症者の言動を額面通りにとってしまうと、依存症という病気の本質を見誤ってしまいます。

しかしながら、中には、会話が通じる人もいて(笑)、
「私は最低です。必ず、薬・酒をやめますから」と涙を流す依存症者もいます。

また、2、3ヶ月の入院の間に、考えがどんどん変化していき、

「自分を見つめ直し、自分がどれだけの迷惑を家族に、社会にしてきたか、やっと分かりました。金輪際、薬。酒はやりません」

と言いながら退院していく人もいます。
では、その人たちが必ず、薬も酒もやめれたかというと、ほとんどがやめられません。反省・後悔が足りなかったんですかね?

毎日、毎日、一生懸命、話をして、説得をして、退院の時には、固い握手をして、涙を流しながら
「お世話になりました。もう二度とこのようなことは致しません。必ず更生します」と言います。

僕も感動しちゃって、涙を浮かべるわけです。
でも1ヶ月後、また酒を飲んで、再入院です。力が抜けるでしょ。

でも、その人は「片山さんを裏切ってしまって、申し訳ありませんでした」と言いながら泣き崩れているんですよ。
その人を、責められます?「これだけのことをしてきて!まだ、反省・後悔が足りないんだな!」とか言えませんよね。

そんなことを10年近く、1000人ぐらい見てきたら、嫌でも気付くでしょ?

この人たちは病気なんだということを。
そして、認知(考え)をいくら修正しても病気は治らないんだということをです。

炎

認知(考え)を超えた行動がある

僕の臨床経験から、考えが変わっても病気が治らない人が依存症のなかでは多くいるという話をしましたね。
そのため、ベックのいうように、認知の歪みを修正しても病気は治らないよ~(涙)という話でしたね。

エビデンス(科学的根拠)のある話もしたいのですが、臨床で、いっぱい経験してきたから、もっと書きたいじゃないですか(笑)、臨床でのこと。まだまだ無限にありますからね。

臨床の中でみた認知を超えた行動

例えば、酒を長らく飲んできてきた人が、禁断症状でせん妄という意識障害をおこすことがあります。
当然、会話もままならないので、保護室という格子のついた独房のような部屋からの治療になります。

日中は、まだいいんです。玉のような汗は出てますけど、以外と会話もできる場合も多いので。
夜になったら、せん妄の状態が悪化してきます。
幻覚も見えるようになります。

まあ、せん妄もいろいろなパターンがありますが、多くは小さい虫が見えるので、一晩中潰している(実際はいないけど)ことも珍しくないです。
ある人は、夜になるにつれ、目がギラギラしてきて、一向に寝る気配がないわけです。

夜勤で見回りをしている。保護室ゾーンを通ると声がする。
「おい。兄ちゃん。ちょっと悪いけどな、酒買うてきてくれるか?」
「(あ~始まったなあ)・・・分かりましたけど、お金はあるんですか?」

※ちなみに、患者様の安全確保のため、保護室へは、手荷物は何も持ち入れないようになっております。

「金はあるに決まっとるがな。ほらっ」パラパラ~
「・・・これ、ティシュペーパーですよ」
「ティッシュ!?おっかしいなあ~?」
「・・では、僕はこれで失礼します」
「おい!兄ちゃん!待ってくれ!」「金は後で払うがな!」

そんなこんなを何度か繰り返すと・・。
「オラ!」「酒じゃ!」「酒を買ってこい!」ガンガンガンガン!!!(格子を蹴る音)
「他の患者さんの迷惑になるので静かにして下さーい」
「オメエが、酒を買ってこんからじゃ~くぁwせdrftgyふじこlp!!殺すぞ!」

とまあ、少し創作も入っていますが、こんな感じです。
これが、禁断症状、せん妄状態が落ち着いたら、別人のようにいい人になったりするから分かんないもんです。

とにかく、意識障害がおき、ここがどこか、自分が誰かも分かっていなくても、酒の欲求だけは残っているのです。

もはや考えとは別の何かがあるとしか思えないですね。意識はなくとも欲求はある。依存症って怖いですね(汗)。

え?まだ、考えを変えたり、意志を強くもてば病気が治ると思いますか?そうですか(笑)。
まだ、納得しませんか?なかなか、しぶといですね(笑)。

ねずみの実験の例

ずっと、アーロン・ベックへの反論のような感じのことを書いてきていますが。
認知(考え)を超えた行動というものがあるということが、ここ最近の僕の投稿の趣旨です。

それは、うつ病の人が明るく楽しく生きたいと願ってもできないことや、摂食障害の人がもう食べ吐きをやめようと思っても、食べ物を前にしたら、せずにはいられないとか、全て一緒、同じメカニズムです。

ベックの言葉をあえて使うと自動思考(自動的な考え。矛盾した言葉)があるということです。
それが、端的に、わかりやすいのが依存症という病気です。

しかし、依存症も「意志が弱い」とか「どうせ好きでやってきたんだろう」と批判されることが多く。実に、誤解の多い病気であると言えます。

そのために、依存症が病気であるというエビデンス(科学的根拠)について少し書いていきたいと思います。

ひとつ例を出すと、ネズミを使った実験で、ネズミというのは本来夜行性であり、日中は日陰を好みます。
この行動はおそらく、ネズミが恐竜のかげにかくれて細々と生きのびていた時代、今から6500万年前から変わらない行動だと思います。
そんなネズミちゃんに、日の照る場所で覚せい剤を微量投与しましょう。
すると、食事もとらず、睡眠もとらず、死ぬまで陽の照る場所に行き続けるのです(!!!)。

え?人間と動物は違う?
人間は意志や理性がある?
批判の声はまだ聞こえてくるかもしれません。

だけど、このねずみの行動こそが依存症のメカニズムであり、認知(考え)を変えても治らない病気があるという事の根拠に他ならないのです。

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